研究課題/領域番号 |
17K05340
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松澤 寛 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (80413780)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自由境界問題 / 反応拡散方程式 / テラス解 / 多安定型 / 進行波 |
研究実績の概要 |
本研究の主題は数理生態学に現れる自由境界問題についての解の漸近挙動と解の形状の解析である.本年度は次の2つについて研究を行った.
一点目は自由境界h(t)と指定した正の速度cで動く境界ctをもつ区間(ct, h(t))で反応拡散方程式をみたす問題である.この問題は外来種の生息領域の最前線を表すh(t)はStefan条件により時間発展するが,生息領域が反対側の境界ctにより一定の速度で失われていくモデルである.この場合,左の境界が自由境界に追いつき,解が有限時間で消滅する現象が現れる.この問題において,非線形項がロジスティック型の場合の解の挙動について松澤による研究成果がCommunications on Pure and Applied Analysisより出版されている.次いで単安定,双安定,燃焼型の場合に解の挙動を完全に分類することに成功した.ロジスティック型の場合を扱った先行研究と異なる手法が必要となる.実際,速度cで動く座標で方程式を書き換えた場合の定常解構造に関する相平面解析とω極限集合の解析が証明の鍵となった.この研究成果は兼子氏との共同研究によりJournal of Differential Equationsより出版されている.また,この成果をスロバキアで行われた国際会議Equadiff2017において発表した.
二点目は多安定型非線形項をもつ反応拡散方程式の自由境界問題において,異なる速度の進行波を積み重ねたような形状をもつテラス解が現れることを証明した.申請時に想定した非線形項の微小変形は必要なく,比較関数の構成順序が証明の鍵となった.このテラス解は自由境界問題に対応する進行波(semi-wave)に収束する部分と通常の進行波にする部分をもち,異なる種類の速度をもつ解が現れるという点で学術的観点からも興味深い.現在,共同研究者と論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多安定型非線形項をもつ反応拡散方程式の自由境界問題において,進行波を積み重ねたような形状をもつテラス解が現れることを証明することに成功し,計画通りに進捗していると評価している.国内では兼子裕大氏(早稲田大学),山田義雄教授(早稲田大学)と定期的な研究打ち合わせを行っており,論文執筆も順調に進んでいる.また,数理生態学に現れる自由境界問題において空間1次元の場合に解の形状を解析する手法を完全に構築できた手ごたえを感じている.
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今後の研究の推進方策 |
多安定型非線形項をもつ自由境界問題において,進行波を積み重ねたような形状をもつテラス解が現れることについて論文執筆を続ける.また,平成30年7月に台北で行われる国際会議「12th AIMS conference on Dynamical Systems and Differential Equations」にて発表を行う.また,問題を空間多次元の場合に拡張することを検討する。また,国外との研究者との連携を強化する.
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次年度使用額が生じた理由 |
数理生態学に現れる自由境界問題の研究者であるオーストリアリアの研究者を訪問する予定であったが予定が合わなかったため,次年度使用額が生じた.今年度は台北で行われる国際会議「12th AIMS conference on Dynamical Systems and Differential Equations」とオーストラリアの研究者の訪問,および国内研究集会での発表旅費に使用する予定である.また,近年,カラーの論文が多くなってきており,現在所持しているモノクロレーザープリンタでの出力に耐えられなくなっている.そのため,カラーレーザープリンタの購入を予定している.
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