研究課題/領域番号 |
17K05340
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松澤 寛 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (80413780)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自由境界問題 / 反応拡散方程式 / テラス解 / 多安定型 / 進行波 |
研究実績の概要 |
昨年度,多安定型非線形項をもつ空間1次元の反応拡散方程式の自由境界問題において,適当な条件の下で解が速度の速いsemi-wave(自由境界問題に対応する進行波)に速度の遅い進行波を積み重ねた形状をもつ「テラス解」に収束することを証明することに成功した.本年度は共同研究者と論文を執筆し,学術雑誌に投稿を行った.現在,査読結果に対応しているところである.研究成果は2018年7月に台北(台湾)で行われた国際会議「12th AIMS conference on Dynamical Systems and Differential Equations」や国内の研究集会で発表を行った.
また,2018年8月から9月にかけて,Yihong Du教授(University of New England,アーミデール,オーストラリア)を訪問し,問題の空間多次元の球対称への拡張について議論した.帰国後,兼子氏(日本女子大学)との共同研究により,解の漸近挙動の分類を行い,ある条件下ではspreading解が漸近的にlog tのずれを含むテラス解へ収束することを証明することに成功した.証明のポイントとなるのは,spreading解が十分時間が経過した後,log tのshiftを含む進行波やsemi-wave(自由境界問題)に挟まれているという評価を得るために,徐々に精密な優解と劣解を段階的に構成することであった.非線形項が多安定型で,空間多次元球対称の問題においてlog tのずれまで精密な評価を含むテラス解を論じた結果はほかになく,学術的意義は高いといえる.この成果について,現在,共同研究者と細部を詰めながら論文を執筆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間2年目で空間多次元球対対称の問題に着手し,目的となる結果が得られていることから進捗状況はおおむね順調であると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
空間多次元球対称の問題で得られた成果を共同研究者と論文としてまとめる.得られた成果を2019年7月にオランダで行われる国際会議「Equadiff2019」にて発表する.また,対称性を仮定しない空間多次元の問題への拡張を行うため,Yihong Du教授を訪問し研究討論を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗がよく,情報収集よりも論文執筆の方に時間を割いたため.2019年度はオランダで行われる国際会議での発表する.また,空間多次元で対称性を仮定しない問題への拡張のため,9月に中国に滞在するYihong Du教授との研究打ち合わせを行う.さらに,有限伝播性をもつ方程式であるporous medium型の退化拡散をもつ反応拡散方程式への拡張も視野に入れており,この方程式を研究する高橋氏(東京工業大学)を沼津で行われる研究集会に招へいする.
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