研究課題/領域番号 |
17K05344
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
川北 素子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80467373)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 代数曲線 / 有理点 / 最大曲線 / Serre上界 |
研究実績の概要 |
有限体上の代数曲線は、以前から純粋数学として興味深い研究対象であった。Hasse、 Weil、 Serreらが既に研究して来た。近年、Goppaにより代数幾何符号が発見されてから、有理点が多い代数曲線が再び注目されるようになった。効率良い情報通信のために有用だからである。本研究は、その要請に応える代数曲線の発見と性質の解明を目指している。
有限体上の代数曲線の有理点数についてHasse-Weil上界があり、この上界に達する代数曲線は最大曲線と呼ばれる。多くの研究がなされ、様々な性質が知られている。Serre上界は、Hasse-Weil上界を改良したものである。本年度の研究成果の一つとして、最大曲線に関する共著論文が雑誌に掲載された。1896年にWimanが発表した論文の中の代数曲線について調べ、最大曲線であることを示し、さらに最大曲線として面白い性質を持つことを証明した。もともとWimanの代数曲線は純粋数学の研究対象として豊富な特性が知られていた。そこで、この研究を拡張して、Serre上界に達する最大曲線でない代数曲線の発見を目指した。2017年に発表した自分の論文で定義した代数曲線の定義方程式を参考した。
Serre上界に達する最大曲線でない代数曲線は、具体例が少なく特徴も殆ど分かっていない。まず、Wimanの代数曲線を拡張した代数曲線について、Jacobian分解を計算して、次にコンピュータ探索を実行した。結果として多数の有理点を持つ代数曲線を得ることが出来た。けれども現時点でSerre上界に達する物を得るに至っていない。Jacobianを完全分解出来ていないため、探索範囲が限られたためである。しかし今後Jacobian分解を工夫することで、目標が達成できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数曲線のJacobian分解は完全分解に至っていないため、今のところコンピュータ探索の効率が悪く、探索範囲を広げられていない状況である。しかし経験から途中経過としては順調であると判断できる。なぜなら、多数の有理点を持つ代数曲線を発見している。今後、Jacobian分解をさらに進めていけば、探索の効率も良くなり、範囲も広げられるので、Serre上界に達する代数曲線が現れるはずである。
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今後の研究の推進方策 |
Jacobian分解の方法を工夫し、地道に計算することで、完全分解できると予想している。続いて、コンピュータ探索のアルゴリズムを高速化し、探索範囲を広げる。それにより、Serre上界に達する最大曲線でない代数曲線を発見できると確信している。最後に発見した新しい代数曲線の特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、参加を予定していた国際会議が延期となったため。
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