研究実績の概要 |
以下に本年度の研究成果について列挙する。 1)次数列が3,3,3,1,1,1 であるグラフをnetと呼び、netにおける次数1の頂点を端点と呼ぶ。1993年にBroersmaは「頂点数がnの2-連結クローフリーグラフGにおいて、任意のinduced netのどの端点も次数が(n-2)/3以上であればGはハミルトンサイクル(=成分数1の2-因子)を持つ」と予想したが、その予想が肯定的に解決された。 2)グラフGとマッチングMに対して、Mを含むようなGの完全マッチングが存在する時、Mは拡張的(extendable)であるという。マッチングのextendabilityに関する研究は古くから行われており、多くの研究成果があるが、それらのほとんどは拡張する辺の本数が元となるグラフの不変量によって制限されている。一方、「Gがグラフの族Xに含まれるならば、ある定数dに対して、Gにおける距離がd以上離れたマッチングが拡張的となる」という性質を満たすグラフの族Xを求める研究が近年進展している。これは拡張する辺の本数に上限がないという点で既存のマッチング拡張の研究と一線を画す、新しい切り口での研究となっている。本研究では、閉曲面に埋め込まれた3-連結3-正則2部グラフが、その最大の面の大きさをdとすることで、上記のXに含まれることが示された。fullereneグラフ全体の族は上記のXに含まれないことが示されており、本研究で得られた成果はその対照的な結果となっているため興味深い。またその差異の本質的な起因は明らかではなく、今後の研究の進展につながり得る研究成果である。
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