研究実績の概要 |
本年度の研究成果について以下に列挙する。 1) グラフGにおいて、マッチングMを含むようなGの完全マッチングが存在する時、Mは(Gにおいて)拡張的であるという。グラフにおいてどのようなマッチングが拡張的となるかを調べる研究(マッチング拡張性の研究)は、様々なグラフに対して広く研究されてきた。いま、M={e_1, ... , e_m}とし、e_iとその両端点からなるグラフ(K_2と同型)をH_iとすると、MがGにおいて拡張的であることとGからH_1, H_2, ... , H_mを取り除いたグラフが完全マッチングを持つことは同値である。したがって、後者の命題において各H_iをK_2と同型なものに限らず、一般のグラフとすることで、マッチング拡張性の研究を一般化することができる。このような新しい視点のもと、本研究では閉曲面上の5-連結三角形分割における河原林-Plummer-小関の定理を一般化した定理が得られた。 2) あるグラフにおけるマッチングMは、含まれる2辺が互いに距離d以上離れている時、距離dマッチングと呼ばれる。また、グラフGに含まれるどの距離dマッチングも拡張的となるとき、Gは距離d-拡張的であると呼ばれる。距離2-拡張的なグラフの性質に関してはYuanらが2000年前後に多くの研究を行っているが、距離3-拡張的なグラフの性質はほとんど知られていない。本研究では、ある性質を満たす二つのグラフのカルテシアン積が距離3-拡張的となることと、辺の密度が小さい連結グラフは距離3-拡張的とならないことが示された。
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