本研究では,真正粘菌などにみられる物質循環現象を用いた環境適応機構をヒントにしたアルゴリズム開発を行う。今年度は,ロボットアーム制御に関する数理モデル作成を行った。ロボットアーム制御においては環境変化に対する柔軟な適応性が期待される。数理モデル作成の際には,環境変化に応じて拘束条件を与える必要があり,さらに,その拘束条件に応じて適切な数値解法を適用する必要がある。本研究では,ネットワークの結合・切断により拘束条件を表現する手法を提案することにより,同一アルゴリズムにより多様な拘束条件を表現することを試みる。今年度は以下の研究を行った。
1.解探索時間を短縮させるために数理モデルの改良を試みた。従来モデルにおいては,ネットワーク上のノード状態の時間変化を常微分方程式により記述していたため,連続時間に対する数値計算が必要であった。今年度は,時間及び状態を離散化した状態遷移モデルの作成を行った。また,提案モデルが,従来モデルの特徴である環境変化後(リンク切断後)における自発的な解探索開始機能,及び堅牢な解探索機能を有することを数値実験により確認した。
2.階層的状態遷移モデルを作成した。従来モデルでは,ロボットアームの各セグメントの長さのみを拘束条件に扱ってきたが,現実の課題に適用するためにはより複雑な拘束条件を表現する必要がある。従来のネットワークモデルを階層化することにより,ロボットアームの可動領域に制限を与えることを可能にした。
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