研究課題/領域番号 |
17K05365
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐々木 徹 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20260664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 応用数学 / 解析学 / 関数方程式論 / 数理生物学 |
研究実績の概要 |
齢構造を含む,病原体ダイナミクスモデルの数理解析において,基礎生産数が 1 以下の場合は感染がない平衡点が大域安定となり,基礎生産数が 1 より大きい場合には,ある条件下で内部平衡点が大域安定になる事を証明した.齢構造モデルの場合は偏微分方程式になるので,常微分方程式や (有限) 遅れのある常微分方程式のように,リアプノフ関数を構成してすぐに安定性が証明出来る訳ではなく,Smith and Thieme (2011) にあるようなアトラクタを用いた議論を精密に行なう必要がある.これに関して,厳密な議論を行ない,証明を完結させた.リアプノフ関数を用いた研究は,現在さかんに行なわれているが,リアプノフ関数の構成後の議論を正確に行なっている論文は少なく,これをしっかりと記述したのは,非常に意義のある事と考える. 空間拡散を考慮したウイルスダイナミクスの研究では,Nowak and Bangham の基本モデル (未感染細胞,感染細胞,ウイルスの相互作用を記述したモデル) の理論的研究に数値シミュレーションの結果を加え,論文を完成させた.ウイルスダイナミクスの研究は空間構造を無視したモデルを用いる場合が多いが,本研究はそのようなモデルの利用を正当化するという意義がある. また,この基本モデルに液性免疫または細胞性免疫の効果を加えたモデルの解析を行ない,基本モデルの解析の際には現れなかった新たな問題を明確にした.これは,今後の研究につながるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
齢構造を含む,病原体ダイナミクスモデルの数理解析において,基礎生産数が 1 以下の場合は感染がない平衡点が大域安定となり,基礎生産数が 1 より大きい場合には,ある条件下で内部平衡点が大域安定になる事を証明した.齢構造モデルの場合は偏微分方程式になるので,常微分方程式や (有限) 遅れのある常微分方程式のように,リアプノフ関数を構成してすぐに安定性が証明出来る訳ではなく,アトラクタを用いた議論を精密に行なう必要がある.この議論を整理し,証明を正確に記述して,論文を完成させた.この研究については順調に進展している. 空間拡散を考慮したウイルスダイナミクスの研究では,Nowak and Bangham の基本モデル (未感染細胞,感染細胞,ウイルスの相互作用を記述したモデル) の理論的研究に数値シミュレーションの結果を加え,論文を完成させた.この論文は Discrete and Continuous Dynamical Systems, Series B に掲載された.免疫の効果を記述する変数を取り入れたモデルの解析では,当初想定しなかった難しい点が明らかになり,現在それを解析中であるが,基本モデルに関して数値シミュレーションによる解析を追加した論文が雑誌に掲載されたことから,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
空間拡散を考慮したウイルスダイナミクスの研究では,Nowak and Bangham の基本モデル (未感染細胞,感染細胞,ウイルスの相互作用を記述したモデル) に液性免疫や細胞性免疫の変数を追加したモデルの解析を行なっている.液性免疫変数または細胞性免疫変数の一方を取り入れたモデルの解析において,基本モデルの解析では現れなかった問題点が見つかったが,これに関しては数値シミュレーションによる実験や,線形近似,力学系の理論の応用などで解決していきたいと考える.液性免疫変数と細胞性免疫変数の両方を取り入れたモデルに関しては,空間一様性を仮定した常微分方程式モデルの解析から始める必要があり,まずはこの常微分方程式モデルから研究を進めたい. 齢構造をもつ病原体ダイナミクスモデルの研究では,ウイルスの株が複数になる場合を研究している.この研究は,今まで研究した,単数株の齢構造病原体ダイナミクスモデルに用いた手法を元に行なっている.モデルが複数株になっている点に関しては,(無限) 遅れを持つ複数株ウイルスダイナミクスモデルの解析に用いた手法を参考にして研究を進めている.免疫の効果を記述する微分方程式における活性化項の形によっては,境界平衡点 (免疫変数の値が 0 になる平衡点) が表われる場合もあり,この場合はダイナミクスがかなり複雑になるので,これを分かりやすく記述して整理する必要があると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がほぼ目標どおりに進展したので,次年度の研究に利用しようと考えたから.
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