研究課題/領域番号 |
17K05368
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村川 秀樹 九州大学, 数理学研究院, 助教 (40432116)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 応用数学 / 数値解析学 / 細胞接着 / 細胞選別 |
研究実績の概要 |
提案済みの細胞接着の数理モデルを現象論的立場から再考し、修正を行った。修正モデルは解析的に、従来のものより性質の良い形になり、従来モデルにおいて幾分不自然だと思われた数値的振る舞いが解消された。異なる細胞集団の分離、対照的融合、非対称的融合、押込みなど、実験により観察される現象について、実測値を用いた数値実験においてそれらの現象が定量的に再現できることが確認された。更に、提案モデルでは、細胞接着のみでなく、細胞の反発についても自然に導入できることが分かり、多くの数値計算の結果、細胞集団の振る舞いの理解に対して新たな知見を得ることができた。 細胞接着の数理モデルに関連する非線形非局所凝集拡散方程式ついての数値解析及び数理解析を行った。空間離散化法としては風上型有限体積法を採用した。数値解の非負性及びエネルギー散逸性について解析を行った。数値解の非負性については風上型有限体積法を採用すれば、時間離散化の様々な選択において自然に導出できることが分かった。エネルギー散逸性については、どのような時間離散化でもその性質が成り立つわけではなく、非局所移流項を半分陰的、半分陽的に時間離散化すると、成立することが解析に示された。更に、数値解の有界性などのアプリオリ評価について議論した。細胞接着の数理モデルについては、数値解の有界性を示すことが困難を極めたが、特殊な数値スキームを考えることにより、それが実現できることが分かった。更に、数値解の可解性、同程度連続性、収束性などについて解析的に証明した。かくして、離散レベルでの可解性、構造の保存性、収束性が示され、これらから直ちに連続問題の可解性及び解の性質が得られた。 2017年度に引き続き、数理モデルの応用について研究協力者と数値実験と生物実験の双方を活用した議論を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
解析、応用については当初の研究計画通りに順調に研究が進んでいる。これらに加えて、当初の計画になかった数値解析に関する研究が大幅に進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の研究計画以上に順調に進んでいる。本年度も引き続き当初の計画を進めることに加え、数値解析に関する研究を推し進める。また、本研究を通して、細胞集団レベルではなく、細胞個体レベルでのモデリング・解析の重要性とその実行可能性が見えてきたため、その研究を遂行するとともに、次の研究計画への発展させるための戦略を練る。
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