研究課題
前年度に引き続き、細胞接着の数理モデルに関連する非線形非局所凝集拡散方程式ついての数値解析及び数理解析を進めた。前年度の結果を踏まえて、解の正値性を解析的に示した。この結果は、多成分問題の解析に役立つものであると考えられ、研究が飛躍的に進捗したと言える。本研究で提案した数理モデルを生物の脳神経細胞の構造形成の理解のために応用した。生物の脳の神経細胞はカラム構造と呼ばれる構造を作っている。その構造形成には、数万種類の神経細胞が関連しており、特に、同細胞種間、異細胞種間における細胞接着力の相関が最も重要な役割を果たしているのではないかということが、共同研究者による実験の観測から予測された。このことを検証するために、細胞接着の数理モデルを応用し、数値実験の立場から研究を行った。実際に、野生型を用いた実験、変異体を用いた実験を含め、多くの実験を数値実験により再現することができた。数理モデルでは、細胞接着の相関以外は含まれていないため、本研究成果は、カラム構造形成に細胞接着力の相関が最も重要であるという結論を支持するものである。本研究では、数十万から数百万の細胞数からなる組織レベルの巨視的な細胞接着現象を対象としてきた。しかし、細胞接着現象や細胞選別現象を理解する上では、数十から数百程度の細胞数からなる細胞レベルの微視的現象についても研究する必要がある。当初の研究計画が順調に進んでいるため、研究を更に発展させ、微視的現象についての数理的研究に着手した。そして、「細胞接着力(表面張力)の違い」と「各細胞の体積保存」という単純な原理のみからなる、微視的現象に対する数理モデルを考案した。原理は単純であるが、実際の細胞接着・選別現象を再現できることが確かめられた。これは、考案したモデルが現象の本質を捉えていることを示唆している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 11件)
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