研究実績の概要 |
二元分割表および多元分割表における対称性や非対称性のモデルは数多く提案されており、あるデータに対して複数のモデルの適合度が良い場合に、どのモデルを選択するかという問題が生じる。各モデル間に包含関係が存在する場合には、尤度比検定統計量の差を用いてモデル間の比較をすることが可能であることが知られている。一方で、各モデル間に包含関係が存在しない場合には、AICやBICに代表されるモデル選択基準を用いることが一般的である。 本研究では、分割表解析におけるモデル選択の方法として、L1型正則化法を応用することを考えた。実際に、多元分割表解析において独立性および条件付き独立性などに関するモデルの選択問題にL1型正則化法を用いた研究(Nardi and Rinaldo, 2012)が存在し、その効果が実証されている。また機械学習の分野では、分割表解析においてベイズ論的アプローチとLassoを組み合わせた研究が行われている(Raman, Fuchs, Wild, Dahl and Roth, 2009)。これらの先行研究は、すべて分割表解析における独立性や条件付き独立性に関連するモデルの研究である。したがって、これらの先行研究を対称性のモデルへの適用が可能になるように拡張を行った。実際に、LassoとElastic Netを実装した。さらに、それらの拡張であるAdaptive LassoとAdaptive Elastic Netも実装した。それぞれの罰則項を用いて、実データ解析を行い良好な結果を得ることに成功し、これまでよりも詳細な分割表データの解析が可能になった。同時に、それらのスパース推定から得られる推定量の性質に関する数理面の研究も順調に解明されつつある。
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