研究実績の概要 |
二元分割表および多元分割表における対称性や非対称性のモデルは数多く提案されており、あるデータに対して複数のモデルの適合度が良い場合にどのモデルを選択するかという問題が生じる。平成30年度に引き続き、分割表解析におけるL1型正則化法を用いたモデル選択の研究を行なった。また、新たに情報理論的アプローチを用いた分割表解析の研究も行った。 平成30年度までに、(1)罰則付きの推定量の導出、(2)実装したプログラムの精査、(3)シミュレーションによる提案手法の妥当性の検証を行なった。平成31年度(令和元年度)では、シミュレーション研究の充実を図った。その結果、モデルのパラメータの大きさ、パラメータの数、観測度数の合計が結果の良し悪しに大きな影響を与えることが確認できた。これらの研究成果を論文としてまとめ、ISITA2020に投稿中である。今後は、罰則付きの推定量の精度および漸近分布の導出などを検討している。この研究は、以下に述べる情報理論的アプローチとも関連が深く、スパース推定において情報理論的な性質を活用できないかどうかについても検討したい。 情報理論的アプローチを用いた分割表解析に関する論文が掲載された(Tahata, 2019, Japanese Journal of Statistics and Data Science)。この論文の中で、正方分割表解析でこれまでに提案されてきた非対称性のモデルは、ある条件のもとでf-divergenceに関して対称性にもっとも近い性質を持つことが示された。この結果は、Ireland, Ku and Kullback (1969) の結果を大きく拡張したものであり、先行研究で提案されたモデルに対して情報理論的な新しい解釈を与えるものである。
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