研究実績の概要 |
1年目にあたる平成29年度には、新たな2次元トーラス上のデータのためのコピュラの提案およびその統計的性質・推測の考察を行った。そして、提案したコピュラは、Wehrly and Johnson (1980)のモデルでは成しえなかった中央や裾付近での多様な依存関係を表現することが可能となることを示した。また、このコピュラは、分布関数や確率密度関数が陽に表せること、パラメータの解釈が容易であること、dependence measureが簡潔に表現できること、最尤法に基づくパラメータ推定が数値的に求めることができることなど、扱いやすい多くの性質が成り立つことを明らかにした。
コピュラを導いたアイデアについて述べる。コピュラの提案にあたっては、研究代表者の過去の研究結果(Kato and Jones, 2015)のアイデアの一部を活用した。Kato and Jones (2015)による論文「A tractable and interpretable four-parameter family of unimodal distributions on the circle」(Biometrika, 102巻, 359-370頁, 2015年)では、円周上の新たな非対称分布を提案し、その統計的性質を調べている。この研究そのものはコピュラとは直接関係はないが、この論文の着目すべき点は、分布の導出を特性関数(より正確にはtrigonometric moment)の特徴付けによって行った点にある。この特徴付けにより、分布の平均方向・集中度・歪度・尖度を柔軟に調節することが可能となっている。研究代表者は、このアイデア(特性関数による特徴付け)を生かして、上述の2次元トーラス上のデータのためのコピュラを得た。
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