研究課題/領域番号 |
17K05380
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅田 秀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60447357)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超巨大ブラックホール / 初代星 / 回転星 / 自転星の進化 |
研究実績の概要 |
Uchida 他 (2017) の論文において、回転している超巨大星 (Supermassive Star) の重力崩壊を原子核反応を含むシミュレーションによって一般相対論的に計算した。原子核反応を入れる意図は、核融合による発熱によって重力崩壊が阻害されないかどうかを調べる目的がある。結果として原子核反応自体はさほど重要でないが、主に回転の効果によって非常に大きな爆発エネルギーを持ったアウトフローが発生することが示された。同時に太陽質量の10万倍もの大きなブラックホールを形成し、これは宇宙初期に発見されている超巨大ブラックホールの種となり得ることが示された。超大質量星の形成に伴って巨大な爆発エネルギーを持ったアウトフローが発生する可能性を示したのはこの論文が初めてであり、超巨大ブラックホールの種の形成が直接観測される可能性も示唆され、意義深い研究であると考えている。この研究では私が昨年までに計算した超巨大星の構造を模して作ったモデルを手で回転させることにより初期条件が作られているが、超巨大星の運命には回転が非常に重要であることを示している。これは本研究の目的である、回転した超巨大星形成モデルの構築が重要であることを示しており、本研究の動機と意義を再確認するものとなった。 その他、当該年度には本研究に用いるコード開発の一環として質量降着をしている星の進化コードを通常の重さの重力崩壊型超新星の計算に応用した。具体的にはUrushibata 他 (2017) SN1987Aの親星モデルの構築を行なったが、これによって連星合体シナリオを考えると、色々と謎が多いSN1987A 親星及び星周物質に関係する観測事実をほぼ全て矛盾なく説明できることを示した。現在そこで用いたモデルで質量降着しているPop III星のテスト計算を行っており、本研究の主目的の計算の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度には本研究に用いるコード開発の一環として質量降着をしている星の進化コードを通常の重さの重力崩壊型超新星の計算に応用した。具体的にはUrushibata 他 (2017) SN1987Aの親星モデルの構築を行なったが、これによって連星合体シナリオを考えると、色々と謎が多いSN1987A 親星及び星周物質に関係する観測事実をほぼ全て矛盾なく説明できることを示した。この結果から現在開発中のコードは期待通りの動作をしており、信頼おける結果を導き出せるコードになっていると考えている。現在このコードを質量降着しているPop III星に対応するように改良中であり、回転が入っても正常に動作するかテスト計算を行っており、本研究の主目的の計算の準備を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在SN1987A親星の計算に用いたコードを質量降着しているPop III星に対応するように改良中であり、回転が入っても正常に動作するかテスト計算を行っている。まずはその結果が以前の非回転のコードの計算と矛盾しないかどうかを調べ、それがうまくいった段階で本計算に入る。本計算では質量降着に伴って星に持ち込まれる角運動の大きさを変化させて、様々な回転速度を持った巨大質量星のモデルを構築する。これが成功した段階で流体力学コードを用いて重力崩壊の計算を行い、爆発の有無や放出物質の元素合成について議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
まだ本計算を始めておらずテスト計算が主なため、計算機の購入を遅らせた。29年度購入を遅らせた計算機は30年度に購入する予定である。
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