研究課題/領域番号 |
17K05382
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野本 憲一 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 上級科学研究員 (90110676)
|
研究分担者 |
鈴木 知治 中部大学, 工学部, 准教授 (20280935)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 超新星 / 中性子星 / 磁場 / 大質量星 / 宇宙初代星 |
研究実績の概要 |
宇宙の初代星がどのような質量関数を持ち、どのような進化・爆発・元素合成をしたかを解明することは、現在の天文学の焦点の一つである。最近になって、発見され始めた超高輝度超新星(Superluminous Supernova)は、通常の重力崩壊型超新星の10-500 倍という明るさを示しており、その母銀河が低金属量の銀河であることともあり、巨大質量の星の爆発が示唆されている。本研究では、未解決である超高輝度超新星の爆発機構、親星の質量範囲などを、光度曲線などのモデルから特定することを第一の目的とした。そして、その元素合成と極端な金属欠乏星の元素組成比を比較することによって、超高輝度超新星と初代星の関係があるか、大質量の連星ブラックホールの起源と関係するか、r-process との関連はあるかという問いを解明することを第二の目的とした。 2020年度は、80 - 130 太陽質量(Msun)という大質量星の電子陽電子対生成脈動モデルを、その特異な振舞いで注目されている超高輝度超新星AT2018cowに適用した。具体的には、星風による質量放出で、40 Msun 程度になったヘリウム星が電子陽電子対生成脈動により、そのヘリウムのごく一部を失って星周物質を形成した後、重力崩壊して超新星爆発を起こしたというモデルを構築した。40 Msun 程度になったヘリウム星では、この星周物質の質量が 1 Msun より小さいため、初期のピークへの増光とピークからの減光が、非常に短期間に起こる。爆発のエネルギーが10^52 erg と大きいと、AT2018cowのFBOT と呼ばれる特徴的な光度曲線を再現できることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FBOT (Fast Blue Optical Transient) と呼ばれる光度曲線を持つ超新星 SN2018cow の詳細な観測データが発表されたこと。それとの比較によって、星周物質の質量を含むモデルのパラメータがよく決められたことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
超高輝度超新星による元素合成の組成比と極端な金属欠乏星の元素組成比を比較する。それによって、超高輝度超新星と初代星の関係があるかを調べる。重力波の観測によって質量が求められたブラックホールの起源とどう関係するか、r-process との関連はあるかという問いを解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ・ウイルスの蔓延により、出席・発表を予定していた国際会議の開催が中止となったため。次年度の国際会議出席は予定せず、数値シミュレーションによる結論の増強のための物品費の使用を計画する。
|