宇宙の初代星がどのような質量関数を持ち、どのような進化・爆発・元素合成をしたかを解明することは、現在の天文学の焦点の一つである。最近になって、発見され始めた超高輝度超新星(Superluminous Supernova)は、通常の重力崩壊型超新星の10-500 倍という明るさを示しており、その母銀河が低金属量の銀河であることともあり、巨大質量の星の爆発が示唆されている。本研究では、未解決である超高輝度超新星の爆発機構、親星の質量範囲などを、光度曲線などのモデルから特定することを第一の目的とした。そして、超高輝度超新星と初代星の関係があるか、大質量の連星ブラックホールの起源と関係するか、いう問いを解明することを第二の目的とした。 最終年度は、超高輝度超新星の有力モデルの一つである「星周物質との衝突モデル」に対して光度曲線を計算し、超高輝度超新星の光度曲線、特に観測された紫外線の増光をよく説明できることを見出した。研究期間全体として、超高輝度超新星の3つの有力モデルである、星周物質との衝突モデル、マグネターモデル、56Ni崩壊モデルそれぞれに対して、光度曲線を計算し、水素のない超高輝度超新星の観測された光度曲線と詳細な比較を行った。まず超新星の親星として、80 - 130 Msunの星が電子陽電子対生成脈動を起こして、十分に大量の星周物質を形成するという結果を得た。その上で、上記3つのモデルの光度曲線を計算し、観測との比較検討を行い、星周物質との衝突モデルが、観測を最もよく説明できるという結論を得た。その結果、初代星の起源の定量的な議論を大きく前進させることができ、初代星が太陽質量の100倍近い星であり、大質量のブラックホールを形成しうることを示唆することができた。
|