本研究計画は、一般相対論的輻射流体シミュレーションを実行して、超臨界降着が産み出す輻射やガス噴出(アウトフロー)の特徴と、それが周囲へ与える影響を定量的に見積もってフィードバックの全貌を理論的に明らかにし、将来の観測に備えるものである。今年度は3本の柱ごとに以下の結果を得た。いずれも連携研究者の大須賀健氏(国立天文台)、国立天文台の研究員、京都大学大学院生と行った共同研究である。 1.超臨界降着流の一般相対論的輻射磁気流体シミュレーション:高光度降着流が生み出すコンプトン散乱により変形されたX線スペクトルをモンテカルロ法によって計算し、硬X線領域でべき型スペクトルをもつ超過成分が発生すること、およびそのスペクトル形状は最新のULX(超高光度X線源)の観測をみごと再現することを査読論文にまとめ発表した。(2)一般相対論的磁気輻射流体シミュレーションデータを使って、ブラックホールに落ちこむガスリングの運動と輻射光度変動を定量的に明らかにし、査読論文雑誌で発表した。(3) ブラックホールおよび中性子星への超臨界降着およびアウトフローの共通点と相違点を、一般相対論的輻射磁気流体シミュレーションを実行して明らかにし、査読論文雑誌で発表した。 2.ライン輻射輸送計算とクランプ状アウトフローの観測可能性:研究の母体となるクランプ状アウトフローの3次元磁気流体シミュレーションを世界で初めて実行し、査読論文として発表をした。 3.バイナリーブラックホールへの超臨界降着とアウトフロー:外国人共同研究者のIllenseer氏(キール大)が開発したcurvilinear grid法流体コードを用いたシミュレーションを実行し、バイナリーブラックホールの降着・噴出過程を調べた。
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