研究課題/領域番号 |
17K05384
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 佳宏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10290876)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 活動銀河核 / ブラックホール / X線 |
研究実績の概要 |
Swift衛星BAT望遠鏡による全天硬X線サーベイで見つかった活動銀河核の分光観測プロジェクト(BAT AGN Spectroscopic Survey, BASS)を進めた。近傍宇宙にある400 天体以上の1型・2型活動銀河核に対し、広輝線の幅または星の速度分散から、ブラックホール質量を導出することに成功した。今後の研究の基本となる、X線スペクトルカタログと可視分光データカタログの第一版を、ApJS誌に出版した(Ricci et al., Koss et al.) 。これらのデータベースを用いて、隠された活動銀河核の割合、すなわちブラックホールを覆うガスの立体角が、エディントン比(ブラックホール質量で規格化した光度)と強い逆相関を示すことを発見し、Nature誌に報告した(Ricci et al.)。この事実は、活動銀河核からの輻射フィードバックが、ブラックホール周囲の構造に大きな影響を与えていることを示唆している。 Swift/BATで検出された、深く隠された活動銀河核の「すざく」衛星による全アーカイブデータを系統的に解析し、結果をApJS誌に出版した(Tanimoto et al.)。 NuSTAR衛星で観測されたコンパクト銀河群HGC 62の硬X線データを解析し、そこに含まれる二つの相互作用銀河のトーラス構造に制限を与えた。また、銀河円盤での星形成率とブラックホールへの質量降着率に強い相関がないことを確認した(Oda et al.)。 ALMAによるGOODS-S領域の無バイアスサーベイ(ASAGAO)で見つかったミリ波銀河のカタログと、同領域のChandra衛星による深サーベイデータをマッチングさせることで、赤方偏移1-3にある星形成銀河中の活動銀河核を探査した。その結果、超高光度赤外線銀河の90% が活動銀河核を有することを発見した(Ueda et al.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、BASSプロジェクトの推進、「すざく」による埋もれた活動銀河核の広域X線スペクトルの解析、NuSTARによる相互作用銀河の観測、ALMAとChandra衛星を用いた遠方星形成銀河からの活動銀河核の探査と、広い研究テーマで多くの成果を出すことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
さらにBASSプロジェクトを進め、X線と赤外線の光度相関をより詳細に調査する。京都大学「せいめい」望遠鏡を使った追求観測も開始する。また、活動銀河核のトーラス構造を解明するため、クランピートーラスからのX線スペクトルモデルを完成させ、近傍の活動銀河核の実データに適用する。NuSTAR衛星による高光度赤外線銀河の観測とデータ解析を継続し、星形成とブラックホール成長の関係を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スケジュールの折り合いがつかず、海外出張の回数が予定より減ったことと、購入を予定していた備品(計算機)を、大学予算で賄うことができたため。繰り越した使用額は、次年度に追加で行う予定の海外出張旅費および論文投稿費に当てる予定である。
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