研究課題
銀河中心の巨大ブラックホール周辺からのガス噴出流が母銀河での星形成活動を抑制する(フィードバック) 現象が提唱されている。この仮説を検証するため我々は、可視光[O III] 輝線の短波長側へ顕著に裾を引く天体のサンプルの中で最も近傍に居る天体について、すばる望遠鏡の補償光学機能と可視光面分光装置を用いて観測を行った。観測した狭輝線1 型セイファート銀河2 天体のうちIRAS 04576+0912 については、[S II]6716,6731A輝線を用いて高速(約900 km/s) で高密度(3000/cc 以上) のガス噴出を発見し、査読付き科学雑誌に論文として発表した(Kawaguchi et al. 2018)。さらに、ブラックホールのごく近傍から放たれる連続光や水素原子が放つ輝線スペクトルをモデル化し、視野内の各場所のスペクトルから差し引く手法を開発した。時間的な制約のためにまだ手法の確立には至っていないものの、差し引く手法を作成したことで、視野内の各場所でのガスの運動やガス密度を計測する段階へ進む準備ができた。また、平成30年12月には、Very Large Telescope(ヨーロッパ南天文台) に提案していた追加観測計画が採択され、今後の研究発展へ繋がった。また、活動銀河核のX線スペクトルに見られる鉄の蛍光輝線の散乱光--コンプトンショルダー--の強度が、散乱ガスの金属量に敏感であることを明らかにし、欧文査読誌に論文として発表した。つまり、観測されるスペクトルから、ブラックホール周辺数10パーセクスケールでの金属汚染(星形成史の蓄積)を計測できることを意味する。これらの成果を論文発表の他、学会年会や研究会において、招待講演4件(内1件は国際会議)、一般講演6件(内2件は国際会議)、談話会2件で発表した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに得た研究成果は、欧文査読誌で発表した他、投稿し現在審査中であるものも数編ある。また、学会年会や研究会において招待講演5件(内1件は国際研究会)、一般講演11件(内3件は国際研究会)、談話会3件で発表しており、十分な成果を挙げていると考えている。
ブラックホールのごく近傍から放たれる連続光や水素原子が放つ輝線スペクトルをモデル化し、視野内の各場所のスペクトルから差し引く手法の開発を続け、確立させる。すばる望遠鏡で得たデータ全ての解析と論文発表を進める。また、Very Large Telescope(ヨーロッパ南天文台)の新装置MUSE/Narrow-Field-Modeで得るデータの解析も進め、各位置でのスペクトルフィットを銀河回転とガス噴出に成分分離して行うことで、銀河中心部のガス動力学を得る。その結果、銀河中心部での重力ポテンシャルが求まる。これと、不フィットから求まるガス噴出速度の比較から、(1) より外まであふれ出るガス噴出なのか、中心部へいずれ落下するガスの流れなのか、(2) 噴出ガスの運動量・運動エネルギーは重力ポテンシャルに対抗して周りのガスを吹き飛ばせるだけ大きいか、(3) ブラックホール噴出流が銀河での星形成(銀河進化)へどれだけ影響を与えうるのか定量的に明らかにする。
次年度に研究集会開催を2件予定しているため、開催費用を用意するために、出張の際に旅費補助を申請するなどして節約した。次年度は予定通り研究集会を開催しつつ研究計画も速やかに進め、成果を論文などで発表する。
信州大学 談話会 (8月) 川口 俊宏宇宙科学研究所 宇宙物理談話会 (11月) 川口 俊宏大阪市立大学 談話会 (11月) 川口 俊宏
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件) 備考 (3件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 71 ページ: 29
10.1093/pasj/psz002
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 482 ページ: 4846-4873
10.1093/mnras/sty2958
The Astrophysical Journal Letters
巻: 872 ページ: 2
10.3847/2041-8213/ab0216
The Astrophysical Journal
巻: 875 ページ: 115
10.3847/1538-4357/ab0e08
The Astrophysical Journal Supplement
巻: 237 ページ: 5
10.3847/1538-4365/aac724
巻: 480 ページ: 2302-2323
10.1093/mnras/sty1394
巻: 70 ページ: 93
10.1093/pasj/psy089
巻: 866 ページ: 140
10.3847/1538-4357/aae1ac
巻: 867 ページ: 80
10.3847/1538-4357/aae1fe
巻: 869 ページ: 150
10.3847/1538-4357/aaee7a
Proc. SPIE
巻: 10702 ページ: 107028M
10.1117/12.2309324
巻: 10706 ページ: 107063F
10.1117/12.2312351
http://www.onomichi-u.ac.jp/attributes/topics2014.html/2018082000014/
http://www.onomichi-u.ac.jp/attributes/topics2014.html/2018080700015/
http://maxim.phys.cst.nihon-u.ac.jp/compact2019/