研究課題/領域番号 |
17K05390
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 洋一 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (70332757)
|
研究分担者 |
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 星惑星形成 / 光学赤外線天文学 |
研究実績の概要 |
東京大学木曽シュミット望遠鏡のKISOGP探査で見つかった不規則に変光する天体のうち、赤外超過を持つ天体を西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」で観測した。観測には可視光中低分散分光器MALLSを用い、波長分解能600程度の低分散で53天体の可視光スペクトルを取得した。その結果、15天体でHα輝線を検出した。Hα輝線の等価幅は1オングストロームから39オングストロームで、これらの天体は前主系列星であると考えられる。次に、これらの固有運動と年周視差をGaia衛星のデータベースで調べた。大半の天体は2kpcから4kpcに位置し、このうち少なくとも1天体は、同程度の年周視差と固有運動を持つ天体が周囲にないことがわかった。また、周囲に赤外超過を示す天体も存在しない。すなわち、この前主系列星は孤立して形成されたと考えられる。 次に前主系列星15天体の有効温度を求め、質量を推定した。有効温度の推定にはナトリウムの吸収線を用いた。測定の結果、ナトリウムの吸収線の等価幅は1.7オングストロームから4.2オングストロームと弱く、有効温度は4600度から5800度と高いことが分かった。ここから推定される天体の質量は5太陽質量から18太陽質量であり、年齢は1万歳から20万歳である。これらの数値が正しければ、発見した前主系列星の大半はHerbig Ae/Be型星の前主系列段階である。しかしながら、このような天体は進化が非常に速く、今まではほとんど発見されてこなかった。本研究で求めた有効温度が正しい値なのかを確かめるに、別の吸収線の追観測が必要だと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、孤立して存在する前主系列星を検出することができた。一方で前主系列星の有効温度の求め方には不定性が残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
孤立して存在する前主系列星の有効温度はナトリウムの吸収線の等価幅から推定した。しかしながら、求められた有効温度は想定よりも高く、ナトリウム線で精度よく温度を求めることができる範囲の上限値に近かった。そこで、高温でも精度よく温度を求めることができるマグネシウムの吸収線を観測し、天体の有効温度を決定したい。これにより天体の質量がわかり、年齢を正確に推定することが可能になる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、国内外の学会や研究会などに参加することが困難だったため、次年度使用額が生じた。新型コロナウイルスの感染が収束すれば、国内外の研究会に積極的に参加し、成果を発表したい。
|