恒星の大半は集団として誕生すると言われている。確かに今までの観測的研究から、近傍の星形成領域では分子雲から数十から数百の恒星が、ある一定期間に多数形成されていることがわかってきた。一方で、孤立して誕生する恒星は知られていない。そこで我々は、変光と分光観測によって孤立して誕生する恒星を探査した。探査領域は、カシオペヤ座とこぎつね座付近の銀河面に沿った48平方度である。探査には東京大学木曽観測所のシュミット望遠鏡に取り付けられたCCDカメラKWFCを用いた銀河面サーベイ観測(KISOGP)のデータを使用した。次に、不規則に変光する天体の中から前主系列星として知られていない53天体を前主系列星の候補天体とし、兵庫県立大学西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」と可視光分光器MALLSを用いて分光観測した。積分時間は600秒から900秒で、波長分解能は約600である。その結果、15天体からバルマーα線の輝線を検出した。従って、これらは前主系列星であると考えられる。バルマーα輝線の等価幅は1.8オングストロームから40オングストロームまで多岐に渡る。ナトリウムの吸収線の強度から、これらの天体の有効温度は4600度から5800度であることがわかった。HR図上で進化トラックと比較することにより、これらの天体は太陽の5倍から18倍の質量を持ち、誕生から1万年から20万年を経過した若い天体であることがわかった。このうち一天体では、前主系列星と一致する固有運動を持ち赤外超過を示す天体が見つからなかった。すなわち、この前主系列星は星団として誕生した可能性が低く、孤立して形成したと考えられる。
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