研究課題/領域番号 |
17K05392
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
坪井 陽子 中央大学, 理工学部, 教授 (70349223)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フレア / X線 / 可視光 / モニター / 偏光 |
研究実績の概要 |
全天を90分の周期で走査しているMAXIで捉えたX線増光を、X線望遠鏡NICERを用いて追観測した。X線源は、はえ座GT星という4重連星であり、NICERはMAXIでの増光検出から1.5日後の追観測に成功した。このフレアの放射エネルギーは~1e39 ergであり、過去最大規模のフレアであった。我々は、この追観測の詳細と、はえ座GT 星から繰り返し検出される、いずれも最大級のX線フレアのMAXI による検出、およびそれらフレアの物理パラメータについてまとめ、その成果は「Sasaki et al. 2021 ApJ」として出版された。 我々はSi結晶を曲げ、ブラッグ反射を用いて集光しつつ、X線偏光に感度を持ち、さらに焦点からずらして検出器を置くことにより高い分光能力までを併せ持つ、ユニークな光学系を考案し、開発しているが、今年度はその偏光性能を調べた。この光学系は結晶面が湾曲しているため、ブラッグ反射型でありながらX線帯域に幅を持つ。今回、偏光感度を調べたのは、理論上もっとも偏光感度の高くなるはずのエネルギー 6.4 keV のX線ではなく、エネルギーが 8.05 keV であり、その感度が理論と一致することを確かめた。その成果は、「芳野ら日本天文学会2021年春季年会口頭発表」として報告を行った。 また、次世代のX線観測衛星 Athenaは大きな有効面積を誇り、フレアを細分化して解析することに重用すると考えられるため、その実現が望まれる。しかし、帯域により、特に結晶の吸収端近傍では感度が落ちる。これを補完するために、鏡面に Diamond Like Carbon (DLC)を成膜し、反射率を上げることが提案されている。この成膜のためのパラメータを洗い出し、確かにDLCを10 nm 以下という薄さで成膜させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MAXI で観測される巨大フレアの中でももっとも巨大なフレア群を頻発する GT Mus の活動性、およびフレアの詳細について論文としてまとめることができた。また、X線分光偏光計の偏光感度が予想と一致することを示すことができ、学会で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
結晶湾曲型ブラッグ反射X線偏光分光計を実際に飛翔体に搭載できるデザインにし、実用化を進める。 フレアの時間変動の形からフレアループの形状やサイズを見積もり、恒星の他のパラメータとそれらとの相関をとることによって、何が巨大フレアを引き起こす本質なのかについてまとめ、論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、X線分光偏光計の実用化が計画通りまでは進まなかった。そのため、この実用化に向けた費用を残している。また、現在、複数の論文を書いており、その投稿代を残している。
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