研究実績の概要 |
周連星円盤の磁気流体シミューレーションを開始するのに先立ち、磁場を考慮しない流体のシミューレーション結果を解析した。これまでの研究により周連星円盤は非対称な構造を持つことが示されていたが、その回転速度やコントラストの定量的な解析は進んでいなかった。そこで今年度は新たな解析手法を考案し、周連星円盤の非対称な構造を定量的に見積もった。 この方法では周連星円盤をz方向に積分し、x-y平面上に面密度分布を求める。この面密度分布を半径を半径が異なるいくつかの円環に切り出し、方位角方向にフーリエ変換した。フーリエ変換により、円環上の平均面密度、非対称コントラスト、非対称成分の角速度を見積もることができる。この方法を時間的に連続したステージ適用し、円盤の平均面密度、非対称コントラスト、非対称成分の角速度の半径ごとの時間進化を得ることができた。 また周連星円盤のシミューレーションコードを改造し、単独星の周囲の星周円盤のウォープ現象について研究した。これまでの星周円盤の観測によると、進化の後期段階である遷移円盤やデブリ円盤に円盤のゆがみ(ウォープ)が指摘されてきた(たとえば、HD 142527, LkCa 15, AA Tau)。最近のALMAによる高分解能観測では、進化の初期段階である原始星の星周円盤にもウォープ構造が示唆されている(たとえばL1489 IRS)。これは、質量降着が盛んな時期にも星周円盤をウォープさせるメカニズムが存在することを示している。研究代表者のこれまでの研究によると(Matsumoto 2015, 2017)、乱流を持った分子雲コアにおける星形成のシミュレーションを行うと、乱流によって傾いた星周円盤が形成されることが示唆される。これを検証するために、降着するガスの角運動量の向きが非定常なモデルを作り、ウォープ円盤を再現した。
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