研究課題/領域番号 |
17K05396
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
大屋 真 国立天文台, TMTプロジェクト, 特任准教授 (80399287)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 補償光学 / 可変形鏡 |
研究実績の概要 |
令和元年度に入り前年度末に納品された純圧電素子可変形鏡試作品の実験を開始しようとしたところ、局所的に非常に大きな歪みの発生が確認された。干渉計の縞が細かくなり過ぎて干渉計で測定できない程であった。製造後に何らかの原因で接合箇所が剥離した状態になったものと考えられる。そこで次の様な負荷試験を行い接着剥離がさらに進行するか実験を行った。(1) 最大電圧を繰り返し印加する。(2) 室温から冷却目標温度まで繰り返し冷却する。(3) 超音波洗浄機で高周波機械振動を与える。結果は予想外で、(1)では無変化、(2)では干渉計で測定できる程度に歪みが減り、その後(3)を行っても歪みは再発せず、その後長期間放置してもそのままの状態を保持している。これらの結果から該当箇所は接合が剥離しているが、周辺が接着で固定されているのでビードロの様な双安定状態になっているのではないかと推測している。 圧電素子間の接合は純圧電素子可変形鏡の構成要素として確立しておきたい重要技術であるが、接合不良箇所が残る可能性が判明した。冷却可能な純圧電素子可変形鏡の製作という目的を重視するために、計画当初に予定していた改良品の発注は一般的な接着剤を用いることとした。あわせて高電圧実験の安全の為に絶縁性が高いセラミック製のホルダーを制し、セラッミク製の冷却実験比較参照サンプルの製作を行った。 圧電材はこれまで鏡面としての実績がないので、研磨後の面の評価を行い、光学ガラス製品と比較した。圧電材の面粗さは4nmRaであり光学ガラス製品の1nmRaに比べると未だ大きい。光学的には使用できるレベルではあるが、面粗さが大きいことが接合の不良が箇所が残る原因である可能性があるかもしれない。 中間段階であるが、ここまでの結果をまとめて日本天文学会2020年春期年会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最大の要因は、接合剥離に起因すると推測される局所的な大きな歪みの発生である。この歪みの性質の実験的確認に時間を要した。これらは想定外の出来事であったが、圧電素子接合方法の重要な技術情報が得られたと考えている。その他、面粗さ測定に用いていた国立天文台先端技術センターの共用装置が故障しており追加のデータは得られていない。また、実験用の恒温槽は京都産業大学にあるがCOVID-19の影響で現在出張に行けず、研究協力者も作業できない状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の一番大きな問題であった局所的な歪みに関しては、同年度中に接着剤を用いた試作品を発注し、納品されている。面粗さ測定装置に関しては、共用品に比べて利用時間の自由度は劣るが、代替品が使用可能と確認している。恒温槽を用いた基本的な実験準備は終わっているので、COVID-19終息後に速やかに実験を開始したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
純圧電素子可変形鏡試作品の局所的に大きな歪みに対処する必要が生じたこと、その後の恒温槽を用いた実験計画が遅延していることによる。今年度の予算は基本的に実験のための出張費と消耗品に用いる予定である。
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