研究課題
2017年度にはケプラー宇宙望遠鏡のデータを用いた(1)太陽型星の黒点のサイズ分布および黒点とフレア活動性の関係に関する研究、(2)太陽型星の黒点寿命に関する研究、および(3)太陽型星の黒点による変光を検出するための広視野測光サーベイシステムの拡張を行った。(1)に関しては、太陽型星の黒点サイズを自転による周期的な変光の振幅から推定し、ある黒点サイズを持つ星の数からそのサイズの黒点の発生頻度を推定する手法によって、太陽の過去の観測データから求めることが困難な、太陽半球面積の1%以上の面積を持つ巨大黒点のサイズ分布(面積の関数としての発生頻度分布)を求めた。これにより、太陽型星における巨大黒点のサイズ分布はべき関数分布を示すこと、および太陽型星の巨大黒点のサイズ分布と比較的大きい太陽黒点のサイズ分布が同じべき関数分布を示すことを明らかにした。さらに、これまで行った太陽型星のスーパーフレアの研究データと黒点のデータを組み合わせることで、フレアの平均発生頻度が黒点面積に比例することも分かった。この結果はMaehara et al. (2017)として査読論文として発表した。(2)の研究では、光度曲線に見られる黒点がある星の自転によって生じる局所的な極小を追跡することで、黒点の寿命やサイズの時間変化を調べる手法を開発した。さらにこの手法で、孤立した黒点の寿命を調べ、太陽黒点のサイズ vs. 寿命との比較研究や黒点寿命と自転周期やフレア発生頻度などとの相関を調べる研究を行った。現時点で寿命と黒点面積の相関に関する結果を論文にまとめている。(3)の研究については、既存のV-bandのサーベイカメラの視野から45度西にずれた視野を同時に撮影するカメラを追加し、1晩の中で3時間離れた観測点が得られ、かつ観測期間を1.5カ月延ばすことができるよう、サーベイシステムの拡張を行った。
2: おおむね順調に進展している
ケプラー宇宙望遠鏡のデータを用いた研究に関しては、太陽型星の黒点のサイズ分布や黒点面積とフレアの関係性などの統計的性質を明らかにすることができたほか、黒点寿命を推定する手法の開発やその応用なども順調に進展させることができた。広視野サーベイシステムの拡張に関しては、(1)当初使用する予定だったカメラが製造中止となったため後継機種を購入したが、既存の制御ソフトがこの機種に対応しておらずカメラの制御に使用するソフトウェアを新規に開発する必要があったこと、(2)観測装置を設置している小屋の屋根開閉機構に障害が発生して観測に支障をきたした時期があったこと等から観測開始が予定よりも遅れた。しかしながら2017年度内には観測を開始することができたため、2018年度以降の研究に支障はない見込みである。
ケプラー宇宙望遠鏡のデータを用いた研究に関しては、巨大黒点の黒点寿命と黒点面積の関係の研究結果を論文にまとめる。また、黒点の位置とスーパーフレアの発生タイミングの解析も行っており、スーパーフレアを起こしやすい黒点とそうでない黒点で寿命等の性質にどのような違いがみられるのか等をさらに詳しく調べる予定である。さらに、近年注目を浴びているM型星周りのハビタブルゾーンに存在する地球型惑星に対するフレア等の磁気活動の影響を評価するため、2017年度に行った、太陽型星の黒点とフレア活動の関係の研究を、M型星やK型星にも適用し、同様の関係がみられるのかどうかについても、本研究を発展させる形で進めている。また、2018年4月にはケプラーの後継機となるTESSの打ち上げが成功し、順調にいけば2018年6月から観測を始める予定である。TESSで観測される明るい天体のデータは、本研究で拡張して運用する広視野測光サーベイで過去7年分のデータがあり、活動性の長期変化を調べることが既に可能となっている。TESSの第一期の観測では、アメリカの共同研究者と共に提案した晩期型星のフレアの観測提案が採択されており、TESSのデータと広視野サーベイのデータを用いたフレアと恒星黒点の関係や長期的な活動性の変化に関する研究も進める予定である。
2017年度に追加した広視野測光サーベイカメラが当初予定していた機種が製造終了となったため同等の後継機種を当初予定していた機種よりも安価に導入できたこと、および追加したカメラ用の制御ソフトの新規開発の必要が出たために観測開始が遅れ、2017年度中に取得できたデータが当初想定していたよりも少なく大容量SSDの購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。追加したカメラを用いた定常観測は2018年2月より開始しており、追加のSSDは2018年度後半には必要となるため本年度中に購入して研究を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 69 ページ: article id. 41
10.1093/pasj/psx013
The Astrophysical Journal
巻: 851 ページ: article id. 91
10.3847/1538-4357/aa9b34