研究課題/領域番号 |
17K05400
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
前原 裕之 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (40456851)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 太陽型星 / 恒星黒点 / フレア |
研究実績の概要 |
2018年度にはKepler宇宙望遠鏡のデータを用いた1.太陽型星における巨大黒点寿命の研究、2.KeplerおよびGaia DR2のデータを統合したF,G,K,M型星におけるフレア活動性と黒点の統計的性質の研究、3.広視野測光サーベイ望遠鏡による太陽型星の黒点による変光の観測を行った。 1の研究では、2017年度に出版した論文で考案した、恒星表面の黒点の見かけの面積が自転によって変化することで生じる光度曲線中の局所的な極小を追跡することにより、個々の黒点を同定する手法を応用し、太陽型星における巨大黒点の寿命の測定に成功した。この結果から、スーパーフレアを起こしうる、太陽半球面積の1-10%程度の面積を持つ巨大黒点(最大級の太陽黒点の数倍から数十倍程度の面積)の面積と寿命を明らかにすることができ、太陽型星の巨大黒点の面積と寿命の関係は、これまで太陽黒点で知られていた黒点寿命と黒点面積の関係の延長線上に乗ることが分かった。この結果はNamekata et al. (2019)として出版された。 2の研究では、2017年度に出版した論文の手法をそのままより広い温度範囲の晩期型星に適用し、さらに2018年に公開されたGaia衛星による精密な恒星までの距離のデータを用いてデータの精密化を図った。これによりF,G,K,M型星におけるフレア活動性と黒点の関係を統一的に理解することを目指して研究を進めた。この研究の結果、フレアエネルギーと黒点面積の相関やフレアの発生頻度分布と黒点面積の関係は星の温度に関係なく成り立つことが分かった。 3の研究では2017年度までに構築・拡張した小型のCCDカメラを用いた明るい太陽型星の測光観測を継続した。これまでに得ていたデータと合わせて7年分の測光データになり、磁気活動周期および黒点面積と平均光度の変化の関係などが解析可能なデータとなったことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケプラー宇宙望遠鏡のデータを用いた研究に関しては、太陽型星の黒点寿命の研究などで当初予定していた通りの進展が得られたが、F,G,K,M型星におけるフレアと黒点の研究においてはフレアの検出手法およびノイズ等のエラーとの判別手法の改良に想定より時間がかかっている。また自前の測光サーベイによる研究では、2018年度中に観測装置を設置している小屋の屋根開閉機構に障害(2017年度の障害とは別のもの)が発生し、測光観測のできる領域に制限があったため、当初の予定よりも得られたデータが少なくなってしまった。この障害は2018年度末に故障箇所の部品交換を行い、2019年度の研究遂行には支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究の進展を踏まえ、2019年度は以下のような研究を進める。 1.KeplerおよびGaia DR2のデータを統合したF,G,K,M型星におけるフレア活動性と黒点の統計的性質の研究をさらに進める。黒点面積とフレアの最大エネルギーや発生頻度との相関に加え、太陽型星以外の晩期型星も含めた黒点自体の統計的性質を調べ、この結果を論文にまとめる。 2.2018年7月から観測を始めたTESS衛星のデータと本研究で拡張して運用する広視野測光サーベイのこれまでに得られた8年分のデータを組み合わせて、明るく磁気活動の活発なF,G,K,M型星活動性の長期変化を調べる。TESSの第一期の観測では、アメリカの共同研究者と共に提案した晩期型星のフレアの観測提案が採択されており、既にデータも公開されている。TESSの観測データからは1か月程度の観測期間中のフレアと恒星黒点の関係および測光的な自転周期を、広視野サーベイのデータから長期的な活動性の変化とTESSの観測時期における磁気活動性の高さを調べることが可能である。これらを組み合わせて恒星黒点とフレアの関係についての研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度中に発生した可視光測光サーベイ用の観測装置を格納する小屋の屋根開閉機構などの障害により、観測可能領域に制限が生じたことで、想定していたよりも得られた画像データ量が少なかった。これにより2018年度中に追加のストレージ等の購入をする必要がなくなったため次年度使用額が生じた。該当箇所の復旧により、2019年度は当初計画していた観測・研究が進められるため、2019年度請求分と合わせて観測およびデータ解析のための計算機資源の増強や、研究成果発表のための旅費、論文投稿料等として使用する予定である。
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