研究課題/領域番号 |
17K05404
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
隅野 行成 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80260412)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 強い力の結合定数 / 基礎物理定数 / 演算子積展開 / リノーマロン / QCDポテンシャル |
研究実績の概要 |
これまで、QCDポテンシャルの演算子積展開(OPE)に基づく理論計算と格子計算の比較により強い相互作用の結合定数αsを精密決定する研究を行なっているが、最近その計算が完成し、その結果をまとめた論文が学術誌Physics Letters及びJHEPに受理された。この計算では、OPEの枠組みの中でWilson係数からIRリノーマロンを除去することによって摂動計算の不定性を除き、同時に非摂動行列要素からもリノーマロン不定性を除いた。格子計算はJLQCD Collaborationから最新の計算結果の提供を受けた。(これは現在日本で手に入る最も良質の計算結果である。)理論計算の有効領域をIR側に拡大し、また稠密な格子を用いたシミュレーション計算の結果を使うことによって、理論計算と格子計算の両方が有効なmatching領域を、従来の同様の計算と比べて格段に広げることに成功した。その結果、信頼性の高い良質なαsの精密決定を行なうことができた。αs(Mz)の精度としては相対精度1.3%となり、単独決定で、現在のParticle Data Groupの平均値の相対精度1.0%に迫る結果となっている。(誤差の範囲内で結果はよく一致している。)また新しい理論的な枠組みを開発したことにより、これまでに計算された如何なる物理量と比較しても、格子計算結果とOPE+摂動QCDの計算結果がここまできれいに広いスケール領域で一致する例はなかったと自負している。この結果の応用範囲は広いと考えられる。αsを様々な理論予言のインプットパラメータとして用いることができるだけでなく、リノーマロンを除去したOPEという新しい方法とその有効性を示したことで、他の物理量の予言にも応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画で狙っていた目標地点までほぼ到達したと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)この方法を更に高精度の格子計算結果に使ってαsの決定精度を上げる。そのためには例えばヨーロッパのBMW Collaborationなどと共同研究を模索する必要がある。 (2)この方法(リノーマロンを除去したOPE)を他の物理量にも適用する。そのためにはQCDポテンシャル以外でもleading log近似を超えて理論形式を拡張する必要がある。その方法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度招へい予定の研究者が都合が悪くなり招へいできなくなった。次年度に招へいすることとする。
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