これまでの研究において、系統的にsubleadingまで含めたリノーマロンを取り除く方法を、 QCD ポテンシャル以外の物理量に一般化する部分の難度が高く、時間が掛かった。(約10年。)リノーマロン不定性をボレル平面上の discontinuity に沿った積分として表し、フーリエ変換と解析接続を使うことで、「Contour deformation 処方」に使うための積分核を構成できることに今回気がついた。この課題を解決できたことが鍵となった。現在はこの研究成果を整理している段階である。この成果を理論的に整備された形で発表する準備をしている。その予備的な解析結果は指導学生の修士論文にまとめられた。(その修士論文は東北大学物理学専攻賞を受賞した。)この一般化された方法は以下のようである。 我々が過去の研究成果で構成した「Contour deformation処方」は、以下の通りである。物理量のOPEにおいて、leading の Wilson 係数に対する1変数積分表示が存在して、その被積分関数に含まれるリノーマロンがsuppressされていることが必要である。そうなっていれば、繰り込み群improvement と積分路変形によって、スケールの分離と大きなスケール比の逆数に関する漸近展開を、通常の Feynman ダイアグラムの expansion-by-regions 法による漸近展開と同様にできる。問題はこのような1変数積分表示の存在が予見困難だったことにある。今回フーリエ変換を使うことでこの問題を一般的に解決できることを見出した。つまり、当初は物理量ごとの詳細な(ミクロな)構造分析をしない限り、リノーマロンを分離・ suppress して漸近展開を構成することが困難であると予想されたが、実は詳細によらずに漸近展開を実行可能であることが明らかになった。
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