研究課題/領域番号 |
17K05406
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 勇二 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50312799)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 弦理論 / 強結合ゲージ理論 / ゲージ理論-重力理論双対性 / 可積分性 / 散乱振幅 / 熱力学的ベーテ仮説 |
研究実績の概要 |
近年の弦理論の主要な研究テーマの一つであるゲージ理論-重力理論双対性により、強結合超対称ゲージ理論は反ドジッター時空中の古典弦/重力理論を用いて解析することができる。これまで我々は、双対性の背後に現れる可積分模型を用いて、強結合散乱振幅を解析的に求める方法を定式化すると共に、関連する可積分系の基本的問題を解決し学際的な研究を推し進めてきた。本研究の目的は、我々の成果をさらに発展させ、ゲージ理論の強結合ダイナミクスの解明、ゲージ理論・弦理論・可積分系にまたがる新たな研究分野の開拓を目指すものである。
本年度は実施計画に従い、6 点強結合散乱振幅を与える Z4 可積分模型の熱力学的ベーテ仮説方程式が、化学ポテンシャル・質量項が大きな極限で解析的に解けることを示し、対応する強結合 6 点散乱振幅を求めた。また、極限からの補正項も系統的に取り扱えることを明らかにした。これは、散乱振幅の研究で重要な役割を果たしてきた Z6 対称性を持つ運動学的配位および soft/collinear 極限での強結合散乱振幅を内挿する解析的表式を与えるものである。これまでに解析されてきた運動学的配位と対照的に、こうした運動学的配位においては強弱結合の散乱振幅の振舞いが大きく異なることも明らかにした。
強結合におけるゲージ理論の解析はハドロンの物理など自然界の理解には大変重要であるが、摂動的な取り扱いができないため大変困難であり、通常は大規模な数値計算を用いて行われる。我々の結果は、強結合ゲージ理論ダイナミクスの理解へ向けた新たな方向性を与えるものである。また、4次元ゲージ理論、10次元超弦理論、2次元可積分模型の間の非常に興味深い関係も示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きな化学ポテンシャル周りでの強結合散乱振幅の展開法を 6 点振幅の場合に完成させ、研究実施計画の目標を達成することができた。さらに、有限結合散乱振幅の研究で重要な役割を果たしてきた collinear 極限に関する知見、弱結合散乱振幅との構造的な相違に関する知見も得られ、研究計画にある全結合領域での散乱振幅に関する知見も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、強結合散乱振幅を与える極小局面の構成、熱力学的ベーテ仮説方程式から読み取れるクロスオーバー現象の散乱振幅への応用を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国旅費が当初予定より増えたため、計算機の購入を差し控え、結果として繰り越しが生じた。 次年度使用額は、計算機購入に充てる予定である。
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