研究課題
近年の弦理論の主要な研究テーマの一つであるゲージ理論-重力理論双対性により,強結合超対称ゲージ理論は反ドジッター時空中の古典弦/重力理論を用いて解析することができる。これまで我々は,双対性の背後に現れる可積分模型を用いて,強結合散乱振幅を解析的に求める方法を定式化すると共に,関連する可積分系の基本的問題を解決し学際的な研究を推し進めてきた.本研究の目的は、我々の成果をさらに発展させ,ゲージ理論の強結合ダイナミクスの解明,ゲージ理論・弦理論・可積分系にまたがる新たな研究分野の開拓を目指すものである.本研究ではこれまで,研究計画・目的に基づき,大きな化学ポテンシャル周りでの強結合散乱振幅の展開法を6点振幅の場合に完成させると共に,強結合散乱振幅,強結合ゲージ理論についての多角的な解析を進めてきた.また,本研究分野の総説となる,可積分性に基づいたゲージ理論-重力理論双対性に関する著書も出版した.本年度は,近年の感染症の流行等により当初の補助事業期間を延長し研究を継続した.特に,これまでの我々の研究を踏まえ,強結合ウィルソンループの真空期待値を与える反ドジッター時空中の正則化された極小曲面など,双対性に現れる幾何学的対象の持つ対称性,及びその物理的な意味,強・有限結合ゲージ理論ダイナミクスへの帰結について研究を進めた.また,我々の用いる可積分模型と量子力学のスペクトル問題の関わりなど,本研究を発展させる方向への研究も行なった.強結合におけるゲージ理論の解析はハドロンの物理など自然界の理解には大変重要であるが,摂動的な取り扱いができないため困難であり,通常は大規模な数値計算により行われる.我々の結果は,強結合ゲージ理論のダイナミクスの理解へ向けた新たな方向性を与えるものである.また,4次元ゲージ理論,10次元超弦理論,2次元可積分模型の間の非常に興味深い関係も示している.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 2022 ページ: no.5, 053B04
10.1093/ptep/ptac061
Journal of High Energy Physics
巻: 2022 ページ: 121
10.1007/JHEP06(2022)121