研究課題/領域番号 |
17K05407
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大栗 博司 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (20185234)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 量子重力理論 / 超弦理論 |
研究実績の概要 |
最近の研究により、アインシュタインの方程式にしたがう量子重力理論の半古典的状態は、対応する場の量子論において特別な量子もつれの状態として特徴づけられることが分かってきた。さらに、量子もつれを特徴づける様々な指標が、重力理論において重要な意味を持つことも分かってきた。これらの研究を発展させ、ホログラフィー原理の微視的な仕組みを明らかにすることで、量子重力理論や超弦理論の新しい理論手法を開発することが本研究の目的である。当該年度には、特に量子もつれを使った量子誤り訂正符号の理論を量子重力に応用し、大きな成果を挙げることができた。具体的には、「量子重力理論はグローバル対称性を持たない」という長年にわたって議論されてきた予想について、ホログラフィー原理の範囲で証明を与えることに成功した。この証明の過程で、場の量子論や量子重力における対対称性の概念について、これまで以上に精密な定義を与えた。この証明は、対称性が自発的に敗れている場合にも当てはまるので、たとえば、質量のないスカラー場が完全に平坦なポテンシャルを持つことがない、ということが結論付けられる。これは、インフレーション宇宙模型の構成にも重要な知見である。グローバル対称性を持たないのなら、許される対称性はゲージ対称性でなければならない。これについては、「ゲージ対称性がある場合には、ゲージ群の有限次元ユニタリー表現がすべて現れる」という予想があった。これについても、証明を完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「量子重力理論はグローバル対称性を持たない」という予想と、「ゲージ対称性がある場合には、ゲージ群の有限次元ユニタリー表現がすべて現れる」という予想の証明は、これまで3年間かけて取り組んできたものであり、当該年度はもっぱら証明の詳細を詰め、それを175ページの論文にまとめることに使われた。論文を完成したので、数々の国際会議でその成果を発表し、有益な意見交流を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
「量子重力理論はグローバル対称性を持たない」「ゲージ対称性がある場合には、ゲージ群の有限次元ユニタリー表現がすべて現れる」という予想 - 今回の証明によって定理となったが - の一般化として、「弱い重力予想」がある。これは、ゲージ対称性がクーロン相にある場合には、電荷をもった粒子状態があり、その間の重力はクーロン力よりも弱いという予想である。今回の証明を発展させ、この予想についても証明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、最終年度であるので、関連する分野の国際会議を開催して、結果の発表と今後の発展を展望することを予定している。そのために、次年度使用額を使う。
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