研究課題/領域番号 |
17K05409
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 斉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (20222341)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 素粒子 / 原子核 / 宇宙線 / 宇宙物理 |
研究実績の概要 |
素粒子の標準模型は2012年のヒッグス粒子の発見で完成した。しかし階層性の問題、暗黒物質、物質・反物質の非対称性など、標準模型を超える物理があることは間違いない。その効果を調べるにあたり、有効場の理論が有用な手法である。その際有効演算子を分類することが必須となる。本提案では、一般の場の理論に対して有効演算子を分類する方法を確立することができた。これを踏まえて、最近提案した強い相互作用をする暗黒物質の模型について、有効場理論の手法と組み合わせることで、具体的な模型を構成し、現象論を展開して実験的検証可能性を調べた。特に、階層性の問題を説明するツイン・ヒッグス理論のなかで実現可能であることを示し、超対称性と同じように階層性問題と暗黒物質を同時に解決できる可能性を提案した。 予期していなかった応用として、暗黒エネルギーについて知見が得られた。最近提案された弦理論の「沼地仮説」へ応用し、LHCからの超対称性への強い制限がありながらも、暗黒エネルギーの有効理論を実際に示し、現在論文を投稿中である。一方弦理論の有効場理論が、現実の標準模型やそれを超える様々な模型と矛盾があることを指摘し、その結果、沼地仮説の改訂に結びついた。改訂後の沼地仮説と現在の宇宙論的制限が整合できることを示し、この論文も現在投稿中である。 このような進展の中、銀河における暗黒物質の分布の違いを説明するシンプルな理論を共鳴現象に着目して発展させた。具体的には、暗黒物質が比較的軽く、そして特別な固有の速度のときだけ互いに散乱する性質を持っていれば、矮小楕円銀河においては暗黒物質に共鳴現象が生じるため、これまで謎とされてきた矮小楕円銀河と銀河団の間での暗黒物質の分布の違いを上手に説明出来るという新しい理論の発表である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応用例に取り組みを始めた昨年度は、有効場理論の知見を暗黒物質の模型構成と現象論へと応用し、また予期しない形で暗黒エネルギーへの応用を生んだ。また、複合ヒッグス理論に非線形シグマ模型を応用し、有効演算子の分類にある程度の進展を見た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は暗黒物質の有効場理論を、系統的な有効演算子の分類で一般のスピンについて考察する。特にSIMPのような、非線形シグマ模型で記述される場合の有効場理論は今まで考察されていないので取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
DESYの長期研究滞在時に、当初ドイツ国内の他機関への出張旅費を見込んだが、先方負担を得ることが出来たため、旅費に余剰が生じた。来年度の出張旅費に余剰分を組み込み使用予定である。
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