研究実績の概要 |
本課題では、標準模型における宇宙暗黒物質、および宇宙バリオン数の起源の問題を解決し、ニュートリ ノ質量の起源も同時に解決する理論の探求を進めている。その際、振動実験では不明のニュートリノ質量の絶対値、さらにはニュートリノがディラック粒子かマヨラナ粒子かなど、ニュートリノの基本的性質を把握する事が重要である。 本年度の研究実績の一つとして、ニュートリノの性質を解明するために、正の電荷を持ったミューオンと電子の束縛状態(ミューオニウム)を考え、その超微細構造に対するニュートリノ対の寄与を評価した。先行研究ではこの寄与をフェルミの4体相互作用を用いて評価してきた。我々は、世界で初めて、標準模型に基づき電弱相互作用の2次の補正として計算を実行した。その結果、これまではフェルミ定数の二乗の寄与とされてきたが、実際にはニュートリノ対に寄与はフェルミ定数と微細構造定数の積に比例する事が判明した。また定量的には、ニュートリノ対の寄与は非常に小さいこと、さらにニュートリノ質量に対する依存性は無視できるほど小さい事が示せた。この結果、電弱相互作用の二次の補正は現在の観測精度と比べると小さいため、実験的に標準模型からズレが今後観測された場合、それは新物理の寄与を示す事がわかった。この論文は、arXivに発表すると共に、現在査読付雑誌に投稿中である。 ”Precision electroweak shift of muonium hyperfine splitting”, by T. Asaka, M. Tanaka, K. Tsumura, M.Yoshimura, [arXiv:1810.05429].
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