研究課題/領域番号 |
17K05413
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川村 嘉春 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10224859)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 湯川結合 / 質量階層性 / ベクターライクフェルミオン / 微調整 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は素粒子の標準模型に関する謎の解明を通して標準模型を超える基礎理論を探り,ILC実験等で検証可能な物理法則を発見することである。 研究計画の1つとして「湯川結合の起源(物質粒子間の質量の階層性や世代間混合の起源)は何か?」の解明に挑むことを掲げた。この課題に対して,標準模型や標準模型の拡張版に基づいて,自然な仮定の下で様々な禁止定理などを導出しそれらを蓄積することにより標準模型を超える基礎理論の構造に迫るというボトムアップ型のアプローチを採用して,湯川結合の起源について探究した。具体的には,標準模型を超える理論として,余分なベクターライクフェルミオンを含む標準模型の拡張版において,「クォークの湯川結合行列の0でない成分の大きさがO(1)であるという仮定からクォーク質量の階層性が自然に生じるか?」,さらに「湯川結合行列の統一という仮定から,クォーク質量の階層性が自然に生じるか?」という問いの答えを求めた。 研究成果としては,ミラークォークと(標準模型の)クォークの間で有意な混合が存在する場合,「クォークの湯川結合行列の0でない成分の大きさがO(1)であるという仮定からクォーク質量の階層性が生じ得ること」,さらに「湯川結合行列の統一という仮定から,クォーク質量の階層性が自然に生じ得ること」がわかった。ベクターライクフェルミオンはテラスケール(TeV)の質量を持つ可能性もあり,将来,ILC等の実験での発見が期待される。さらに,質量階層性を含む物理的なパラメータ間の大きさの較差の生成の際に微調整が存在しないような機構に関して,その特徴を一般的に論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に述べた成果は2編の論文にまとめられ,そのうち1編は学術雑誌に掲載済みである。残りの1編については査読中ではあるが,主な成果はarXivを通して公表済みであるため,上記のような判定を下した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度に行った研究成果に基づいて,それをさらに発展させる。具体的には,標準模型を拡張版として,ボトムアップ型のアプローチに基づいて得られた世代構造をもつような余分なベクターライクフェルミオンを有する模型を自然に導く「大統一理論」や「高次元世代統合理論」を探究し,現実的なフェルミオンの質量階層性とフレーバー混合の起源の解明に挑む。 研究の方策については上記の大統一理論に関する研究を博士課程の学生と共同で取り組む。「Swampland conjecture」などに関するゼミを通じて,新たなアイディアに基づいて標準模型を超える物理の探究を目指す。
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