研究実績の概要 |
ヒッグス粒子に関する謎である「自然さの問題」について再検討した。この問題は「ヒッグス粒子の質量の2乗の量子補正に2次発散が現れ、これを相殺するためにパラメータの間で微調整をする必要があり不自然さである」というもので標準模型の枠内では解決できない問題である。標準模型は有効理論と考えられ、「有効理論とは何か?」という問いに立ち返った。有効理論とは限定されたエネルギースケール内で物理法則を有効的に記述する理論であるとするならば、それが法則を正しく記述する特質をすべて自動的に兼ね備えている保証はない。すると、有効理論を超える基礎理論が有する特質を加味する必要があるのではないかという予想が生まれる。この予想に基づいて、「積分領域に関する双対性」の導入により2次発散が解消される可能性があることを以前に示した。今回は量子重力の効果による問題の解消を目指して、沼地予想をヒントにして、特質の発見と導入を試みた。さらに、有効理論の理論形式である「場の量子論」に根ざした問題として、理論形式の拡張による問題の解消を目指して,場の量子論を超える理論形式を模索した。いずれの試みもそれなりの進展はあったが、時間が足りず期間内では満足のいくところまで至らなかった。現在も探究中でまとまれば論文として発表する予定である。 余剰次元に基づくゲージ・ヒッグス統一模型や世代の統一模型の探究に必要となる境界条件の分類と設定という基礎的枠組みの整備を行った。具体的には、2次元のオービフォールド上の場の境界条件に関する同値類に関する一般的な考察を行った。研究成果としては、「2次元のZNオービフォールド(N=2,3,4,6)を余剰次元として含む模型において,境界条件の同値類について、N次元表現に関する表現行列(N×N行列)には必ず対角型の表現行列が存在する」ことがわかった。現在、論文を作成中で近いうちに公表する予定である。
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