研究課題/領域番号 |
17K05414
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺嶋 靖治 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (20435621)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 超弦理論 |
研究実績の概要 |
量子重力の理解は、我々の世界に対する認識、特に空間や時間の概念を根本的に異なったものに変える、非常に興味深い問題である。特に、ゲージ/重力対応と呼ばれる、量子重力と重力を含まない場の理論が互いに等価であるとする予想が重要となる。この対応は、反ドジッター空間(AdS空間)上の重力理論と共形場理論(CFT)の等価性が最もよく理解されており、AdS/CFT対応と呼ばれる。この対応は、超対称性がある場合は正しいと信じられる多くの証拠がある。しかし、この対応は、証明されたものではなく、予想である。私は、AdS/CFT対応をCFT側から、演算子形式で調べた。強結合のラージNゲージ理論で構成されるCFTでは自然になりたつと考えられる性質を仮定することで、ラージN、かつ、低エネルギー近似では、CFTが実際にAdS空間上の重力理論と等価な事を示した。その際に、 重要なこととして、量子重力理論における局所状態をCFTでの局所状態の線形結合として明示的に関連付ける式を得られたことである。(Phys.Rev.D 104 (2021) 、さらに、プレプリントe-Print:2104.11743 [hep-th]として発表。) この式から、従来の研究で仮定されていたAdS/CFT対応の多くの性質が実際には満たされていないことが示された。特に、量子誤り訂正符号と呼ばれる性質がAdS/CFT対応が持つことが動径方向局所性に関するパラドックスを解消する機構として仮定されていたが、実際には、このパラドックス自体が存在しないことが示された。これらの結果は、AdS/CFT対応を理解し量子重力の性質を調べるうえで、非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子論的に拡張された「幾何学」の研究で重要な事は、通常の幾何学との具体的な対応と、そこからの量子論的なずれの理解である。つまり、古典重力極限の解析が必要になる。ゲージ/重力対応を用いると、これには、一般にlarge N 極限と呼ばれる、自由度の大きいゲージ理論の解析が対応する。実際、この極限を取ることで古典時空やリーマン幾何が創発的に出現するはずである。この点に関して、AdS/CFT対応をlarge N極限で演算子形式で調べることにより、実際に、ゲージ理論の状態から量子重力の状態がどのように再構成されるかを理解できたことは重要である。この解析は、真空の周りの準古典重力についてであり、まだ量子重力の幾何学の理解までは到達していないが、その基礎になる結果である。また、BDHMの外挿公式と呼ばれるAdS/CFT対応成り立つと考えられている関係を仮定することで、ブラックホール時空のような真空以外の古典的状態の周りの準古典重力についても、量子重力の状態のCFTからの再構成を最近の論文で行った。これらの結果から、この研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、今年度得られた結果をさらに進めていくことを考えている。具体的には、演算子形式を用いたCFTの解析を進める。この解析は、様々な古典解の周りの準古典近似を扱っているので、まだ量子重力の幾何学の理解までは到達できていない。これを、非摂動的な量子重力の効果も取り入れたものに拡張する予定である。これは、本研究計画には必要不可欠である。また、ブラックホール解については、量子重力の本質的な性質が重要になると考えられるので、その場合についての非摂動的な理解についても重点的に研究を進めるつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた国内出張、および海外出張を、新型コロナウイルス感染症対策による理由により、次年度に延期することにしたことにより、次年度に旅費をその分使用する。
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