研究課題/領域番号 |
17K05415
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
波場 直之 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (00293803)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 標準模型を超える新物理 / パリティの自発的破れ / SU(2)Rゲージボソン / CPの破れ / ε'/εの実験値と理論値のずれ / LR模型 / 新しいヒッグス粒子 / 実験での検出可能性 |
研究実績の概要 |
パリティの破れは標準模型では仮定であり起源は未だ謎である。パリティの破れの起源を説明する標準模型を超える物理としてSU(2)Rゲージ対称性を持つ、left-right symmetric (LR) 模型がある。この模型では、パリティの破れは高エネルギースケールで自発的に破れると思われる。LR模型では SU(2)Rゲージボソンに加えて、標準模型以外の新しいヒッグス粒子が含まれる。 一方、K中間子崩壊におけるCP対称性の破れを表す量(ε'/ε)に対して、標準模型の予言値と実験値との間に2.1~2.9σのずれがあることが指摘されている。そこで、LR 模型が標準模型を超える新しい物理として存在することで、(ε'/ε)の実験値を説明できないか調査した。その結果、SU(2)Rゲージボソンの質量が58TeV以下の場合、(ε'/ε)のずれを説明できることが判明した。さらに、この新粒子の効果で、中性子の電気双極子能率が将来実験で検知できることを示した。 また、古典的スケール不変性が、強結合SU(N)Tゲージ対称性を導入することで、ボゾニック・シーソー機構が働き、電弱相転移がダイナミカルに引き起こされる模型の構築に成功した。そして、この模型の予言する新粒子の実験での検出可能性について調査した。 さらに、ニュートリノのDirac湯川行列とダウンタイプ湯川行列が等しく、シーソー機構を通じてニュートリノのPMNS混合行列が導出されるメカニズムについて模型に依らない解析を行った。特に、高い精度のRGE解析を行い、今後の研究の発展に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPの破れの実験値と標準模型のずれを新しいヒッグス粒子を予言しパリティの破れを自然に説明するLR模型で見事に説明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も標準模型を超える新しい物理の探求を、ヒッグス粒子を手掛かりにして精力的に続け、実験での予言を見つけ、検証可能性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の研究協力者との打ち合わせの計画があったが予定が変わり次年度に延期になったため。
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