研究課題/領域番号 |
17K05416
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
望月 真祐 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (00362913)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格子ゲージ理論 / ランダム行列理論 / カイラルランダム行列 / ディラック固有値分布 / テクニカラー模型 |
研究実績の概要 |
本年度において、過去の研究代表者の研究では解析的に扱うことができなかった、多フレイバー カイラルシンプレクティック型アンサンブルを含む幅広いカイラルランダム行列集団の個別準位分布を、初めて導出することに成功した。ここで用いられた技法は、統計数理の分野で古くから知られていた行列式点プロセスのヤノッシ密度の公式を引用し、これを実数のクォーク質量パラメータに解析接続した上で、ニューストレーム法を用いて数値評価するというものである。私たちが得た表式は、固有値相関関数の行列式表示と、ギャップ確率のフレドホルム行列式表示を統一する、新規な成果である。私たちは更にこの解析的結果を、スタガード型ディラック演算子を用いたNc=2, Nf=4の格子ゲージシミュレーションで得たディラック固有値分布の数値結果と対比し、完全な一致を得た。これらの解析的および数値的成果は、43ページに及ぶ単一の論文 arXiv:1903.07176 [hep-lat]として発表され、JHEPにアクセプトされた。 今回のランダム行列理論からの解析的成果を今後、ヒッグズ粒子のテクニカラー模型の候補である多フレーバーのゲージ理論(Nc=2, Nf=8など)の格子シミュレーションから得られるディラック固有値の個別分布と比較することにより、あるゲージ理論が通常のQCDと同じくカイラル対称性の破れた相にあるのか、あるいはテクニカラー模型として好ましいウォーキング型であるのか(この場合はランダム行列理論の結果と齟齬する)の精密な判定が可能となる点において、高い学術的意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の【研究実績の概要】に記載の通り、ランダム行列理論の解析的研究と大規模シミュレーションによる数値的研究を併用する本研究計画の通りに進行しているため、順調な進捗と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、有限温度+有限密度におけるNc=2, Nf=2ゲージ理論について、ランダム行列理論側の解析的手法とシミュレーションによる数値的手法を併用して、研究計画に沿った研究を遂行する。具体的な観測対象としては、複素平面でのディラック固有値分布、および固有関数の逆参加比などを採る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究成果を、研究計画に記載の国際会議ではなく国内会議にて発表することとしたため、旅費に余剰が生じた。本年度は成果をECT*(トレント、イタリア)において発表する予約をしており、前年度の余剰額はこの旅費に充てる。
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