研究課題/領域番号 |
17K05416
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
望月 真祐 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (00362913)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格子ゲージ理論 / ランダム行列理論 / ディラック固有値分布 / 有限密度 |
研究実績の概要 |
前年度に論文 [1] JHEP08(2019)053 において開発した解析的手法を有限密度系へ拡張した. 具体的には、 [1]では行列式ないしPfaffian点過程において, そのFredholm行列式ないしPfaffianの代わりにJanossy密度を考えると、それがゲージ理論の文脈ではquench近似に代えてdynamical quarkを取り入れた場合の個別Dirac準位分布に対応することを指摘した. この手法を[2] PTEP18(2018)023B01 で用いたchGSE-chGUE遷移の4元数カーネルに随伴するPfaffian点過程に適用する. [2]は有限baryon化学ポテンシャルでのSU(2)ゲージ理論のquench近似の低エネルギー極限に対応するから, そのJanossy密度は後者でdynamical quarkが存在する場合の低エネルギー極限に対応する. この方法により, chiral GSEの個別準位分布のquark質量 m と化学ポテンシャル μ の2パラメータ変形を解析的に計算した. この解析的結果を、比較的小規模な格子上で配位生成したNf=4, SU(2)ゲージ理論のDirac準位分布とフィットすることによって、小規模な格子実験から2つの低エネルギー定数(カイラル凝縮Σとpion崩壊定数 F)を同時に精密決定する作業に従事している. 解析計算と配位生成に要する時間のため、本年前半迄にはこれらの成果を論文発表できる見込みである.
また、2019年度に研究代表者が主催者代表として島根大学にて開催した研究会「離散的手法による場と時空のダイナミクス2019」で発表された研究を纏めたサイト http://www.phys.shimane-u.ac.jp/mochizuki_lab/risan2019 を作成して公開し、研究情報のコミュニティへの提供を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に記載の通り、ランダム行列理論の解析的研究と大規模シミュレーションによる数値的研究を併用する本研究計画の通りに進行しており、概ね順調な進捗である. ただし2020年度はコロナ禍に伴う直接的研究交流の途絶、および参加予定であった国際会議の中止による研究発表機会の消滅などのため、成果の発表に遅れを生じた.
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今後の研究の推進方策 |
有限密度におけるNc=2, Nf=4ゲージ理論について、ランダム行列理論側の解析的手法とシミュレーションによる数値的手法を併用して、研究計画に沿った研究を遂行する。具体的な観測対象としては、ディラック固有値分布、および固有関数の逆参加比などを採る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴う直接的研究交流の途絶、および参加予定であった国際会議の中止による研究発表機会の消滅などのため、海外および国内渡航費用を全く費消せず、旅費相当額が全額残存した. 2021年度にコロナ禍が収束すればこれらの再開が期待され、残余額を国際研究交流および国際会議参加に充当する予定である.
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