研究課題/領域番号 |
17K05422
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
太田 和俊 明治学院大学, 法学部, 教授 (80442937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超対称ゲージ理論 / グラフ理論 / ヴォーテックス / 局所化 / BPS方程式 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
(1) ヴォーテックスのモジュライ空間体積を超対称性ゲージ理論の立場から導出した。超対称ゲージ理論のヒッグス相においてある種の同変コホモロジー演算子の期待値を考えると、局所化の方法によりヴォーテックスモジュライ空間の体積を与えることが示される。一方、同じ演算子の期待値をクーロン相において評価すると簡単な留数積分に帰着し、厳密にモジュライ空間の体積を求めることができる。今年度の研究では、これらヒッグス相とクーロン相における評価の等価性を局所化の方法の結合定数の普遍性から厳密に証明することに成功した。この研究結果はPTEPに論文として投稿し、掲載が決定されている。 (2) ヴォーテックスのモジュライ空間体積の計算の手法をクイバーゲージ理論に拡張を行った。クイバーケージ理論とはゲージ群と物質場の表現が有向線分グラフ(クイバー図)によって規定されるゲージ理論である。このクイバーゲージ理論におけるヴォーテックスBPS方程式を考え、そのモジュライ空間体積の局所化の方法による導出を試みた。現時点でいくつかの具体的な例についての計算を行っているが、将来的にはグラフ理論の手法を用いて、より一般的な公式の導出を行っている。 (3) 2次元リーマン面を分割したグラフ上(離散空間)でゲージ理論を考え、その性質を数値計算で調べた。特に、超対称性やR対称性などのグローバル対称性について、連続極限においてどのように回復するのかについて研究を行った。研究では、グラフ理論の考え方を用いてグラフ上の保存カレントやWard-Takahashi恒等式などの物理量を定義し、数値計算でどのように測定するのかについての考察を行った。現在は数値計算のためのモンテカルロシミュレーションデータの収集を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クイバーゲージ理論のヴォーテックスのモジュライ空間体積については、計算手法自体は確立しているが、クイバー図のパターンに応じての分類が細かく、系統立てた研究が困難な状況である。より系統的な研究が行えるよう、クイバーゲージ理論の性質の分類や精査に予定より多くの時間を要してしまった。 一方、数値計算を用いた計算では、ディラック演算子の逆行列の評価においてグラフの分割が細かくなると計算コストが非常に大きくなる問題に直面している。これは連続極限を取っていく際に根本的な問題となるので、現在、計算アルゴリズムの改良などに取り組んでいる。また、使用している大型計算機の使用期限や切り替えなどの問題もあり、計画通り数値計算を行えていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
クイバーゲージ理論におけるヴォーテックスの性質については未知の部分が多いが、ある特定の例についての先行研究が存在するので、その研究結果と比較し、具体的な計算を確認しながら研究を進めていく。一方、計算結果の一般的な拡張については、グラフ理論の手法を用いることが有用だと考えられるので、物理量の計算などにグラフ理論の考え方を取り入れて、より系統的に研究が進められるよう定式化を行っていく。 数値計算を用いた研究の方では、新しい大型計算機使用の目処が立ったので、今後はアルゴリズムの改良や並列化を進めて数値計算時間の確保に努めていきたい。また、モンテカルロシミュレーションデータの収集と同時並行で、グラフ上のゲージ理論の対称性や性質について、局所化の方法なども交えながら理論的な側面からの解析も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において主に旅費と物品費において使用したが、値引き等による細かい端数により次年度使用額がわずかに生じてしまった。今後の使用計画としては、次年度使用額分を合算し、旅費や物品費として使用していきたい。
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