離散化された2次元リーマン面をグラフ理論を用いて表現し、その上に超対称ゲージ理論を構築した。グラフ理論はこの離散空間上でボゾン場とフェルミオン場を構成し、超対称性を持った作用を記述するのに非常に有益で、特にグラフ理論における接続行列を用いると、離散空間上でのディラック演算子をその位相幾何学的な性質を保ちつつ表現できることを示した。 離散空間上で定義されたディラック演算子は、接続行列における核として、連続時空上のものと同様にグラフのトポロジーに対応したゼロモードを持ち、そのゼロモードは理論の持つ量子異常に重要な役割を果たすことがわかった。この量子異常は対称性に付随したWard-Takahashi恒等式の破れとして現れるが、この現れ方も連続理論におけるスカラー曲率に対応するものとして、グラフの頂点上の欠損角として評価することができる。 さらに、局所化の方法(局所化定理)を使って、理論の分配関数の経路積分がゼロモード上の積分に簡約化されることを示した。それら量子異常やゼロモードの積分を通じて理論の分配関数を理解することで、どのような物理量が期待値として意味を持つ(期待値を持てる)のかを明らかにした。これらの解析は、ゲージ対称性が可換群(アーベル群)だけでなく、非可換群(非アーベル群)にも拡張可能であり、局所化の方法を用いて厳密な解析を行った。 この研究結果を発表した論文は、グラフ理論を用いた離散空間上のゲージ理論の構築から局所化定理を用いた解析まで完結した内容となっており、他に類似研究を見ないものとなっている。この最終年度に実施した研究は、本研究課題の研究期間全体を通じて集大成と言うべき研究成果となった。
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