研究課題/領域番号 |
17K05426
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
大熊 一正 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (80367507)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トップクォーク / 稀崩壊 / 非標準結合定数 |
研究実績の概要 |
トップクォークは,175GeV程もある質量のおかげで,生成後,非摂動的な効果の影響を受けることなく,ほぼ全てがWボソンとbクォークに崩壊する.その一方で,トップクォークの稀崩壊過程であるt->Zc/Zu過程も理論的には存在可能である.この稀過程は,標準模型の枠組みでは,Glashow-Ilipoulos-Maiani(GIM)機構によって,強く制限されているFCNC(Flavor Changing Neutral Current)に起因する過程であり,将来実験も含めて実験的に観測することが不可能であると見込まれている.しかしながら,もし標準模型の枠組みを超える物理が存在した場合,標準模型でのGIM機構による制限が緩和され,将来的な加速器実験において観測される可能性もある.つまり,標準模型を超える物理の探索として,トップクォーク崩壊の精密測定は,将来的に行われる実験の重要なターゲットの一つである. このため,本年度も昨年度に引き続き,標準模型のトップクォーク相互作用を一般的に拡張し,標準模型では,強く制限されているt->Zc/Zu過程の観測可能性を将来的に実験が行われる高輝度大型ハドロン衝突型加速器(HL-LHC)を想定して吟味した. 結果として,トップクォークのFCNCが引き起こす崩壊過程を誘発するtcZ結合とtuZ結合をそれぞれ特定の模型に依存することなく最も一般的に拡張した場合に存在し得る6種類の結合定数を変数として解析した場合,現状でもそれらの制限は厳しくなく,もし,現在の制限の上限値が実際の結合定数の値として存在すれば,HL-LHCで観測される可能性があることを指摘した.(arXiv:1809.01389 [hep-ph]). さらに,解析を進めるなかで,現在の実験結果を再現するためには,6種類の非標準結合がある程度の相関関係をもって相殺していることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トップクォークの稀崩壊を引き起こすtuZ相互作用, tcZ相互作用は,それぞれ6種類の結合定数からなるが,1種類だけしか存在しない場合には,現状の実験的制限から,あまり大きな値になることができない.しかしながら,2種類以上存在した場合には,比較的大きな値になることができる.解析を実施している過程で,たとえ6種類の結合定数を同時に考慮したとしても,6種類が同時に大きな値になり得ることはなく,主に2つの結合定数が組をなして,相殺していることに気づいた.このため,結合定数の相関関係をもう少し探ることにしたことにより,計算時間が膨大に増加し,次の課題への移行がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
トップクォークの稀崩壊を引き起こすtuZ相互作用, tcZ相互作用は,それぞれ6種類の結合定数の相関関係を調べ,現在の実験結果の制限を再現する組み合わせ(相関関係)とその値の大きさを系統的に解析する.そして,この解析手法を標準模型においては,主たる崩壊過程を引き起こすtbW結合の拡張に応用し,HL-LHCにおいて行われるトップクォーク崩壊の精密測定から標準模型の枠組みでは説明できない現象の観測可能性を吟味する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度,2018年度と,学内での役職及び業務の関係で,参加を計画していた国際会議に参加できなかったため,旅費の繰越が多くなった.来年度は,役職での仕事が減ると思われるので,会議に参加するだけでなく,国内の関連する有識者に年度当初から,来学してもらい,積極的に研究活動を実施する.
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