研究課題/領域番号 |
17K05429
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
三島 智 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (90396424)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 新物理模型 / フレーバー物理 |
研究実績の概要 |
高エネルギー加速器実験であるLarge Hadron Collider(LHC)実験はそのRun2実験を終了したが、現在までに素粒子標準模型を超える高エネルギーの新物理の直接的な証拠は発見されていない。それに対して、低エネルギーのフレーバー実験(BaBar、Belle、LHCb)からの複数の実験データに標準模型の予言からの2~4σ程度の有意さのずれがあることが報告されている。特にb->cτνおよびb->sll(l=e、μ)崩壊において観測されているズレは、レプトンフレーバー普遍性を破るような標準模型を超える相互作用の存在を示唆している。従来考えられてきた新物理模型ではそのような相互作用の存在は想定されておらず、それらのズレの存在は従来とは異なる新物理模型を構築する必要があることを意味している。平成30年度はそのような模型の構築および様々なフレーバー物理量への影響の解析を目指して以下の研究を進めた。 (1) SU(5)大統一模型でレプトンフレーバー普遍性を破るような相互作用を持つスカラーレプトクォークがTeVスケールの質量を持つような模型について研究を進めた。標準模型のフェルミオン質量と混合および実験で観測されているズレを同時に説明可能な模型の構築を目指して、現在研究を進めている。 (2)統合解析ツール HEPfit の開発を進めた。このツールが他の研究者にも広く使用されるように、その正式リリースに向けてコード整備およびマニュアル作成等を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合解析ツールHEPfitの開発は順調に進んでいる。また研究計画で当初予定していた最小超対称標準模型とは異なるが、最近の実験データから示唆されているレプトンフレーバー普遍性を破るような新物理模型の有力な候補と考えられるSU(5)大統一模型の研究を進めた。その研究成果は今後論文にまとめる予定である。このように本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、現在のフレーバー実験のデータに現れているズレを説明可能な新物理模型の構築に関する研究を更に進める。最近の研究により、それらのズレを説明するためには適切な量子数を持ったレプトクォーク(クォークとレプトン間の遷移を引き起こすスカラーまたはベクトル粒子)がTeVスケールに存在すればよいということがわかってきている。そのようなレプトクォークをSU(5)大統一模型の枠組みで考え、それがフレーバー物理をはじめとする種々の物理量に与える影響について解析を行う。そのためにHEPfitの開発を更に推し進める。そしてその結果を基にして、より効果的・効率的に新物理模型の峻別をする手法の開発を目指す。研究成果は随時論文にまとめ、学会、国際会議等で発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの余剰金があったことに加え、当初予定していたノートパソコンの代わりにより安価な電子ペーパー機器を購入したために余剰金が生じた。これは次年度に物品費および旅費として使用する予定である。
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