研究実績の概要 |
aLIGOの2台および Virgoに加えて、我が国のKAGRA重力波望遠鏡が2020年度中に国際共同観測に参加することが期待され、それら4台の重力波検出器を用いた新しい重力理論の検証方法を検討した。特に、重力波の偏波の直接測定を用いる点に特色がある。中性子星連星のように電磁波対応天体を伴う重力波源を本研究では想定した。その重力波源が天球のある領域にある場合、スピン0(スカラー)偏波が仮に存在しても、4台の検出器データのある組み合わせでは、そのスピン0成分を完全に除去でき、スピン1(ベクトル)偏波を検証・制限することができることを証明した。また、具体的な解析も、GW170817イベントの公開データを用いて行った。その結果、ベクトル偏波のひとつの成分に対して、6x10^{-23}という直接的な上限を初めて与えることができた(Hagihara, Era, Iikawa, Nishizawa, Asada, PRD, 2019)。それとは逆に、スピン0成分を(仮に存在したとしても)完全に除去し、スピン0(スカラー)偏波を直接的に検証・制限することができることを証明した。この目的のために、有用な「不変量」を見出し、その不変量を用いて、4台の検出器に対する定式化の拡張を行った(Hagihara, Era, Iikawa, Asada, PRD Rapid Communication, 2020)。この成果は、動的なスカラーを含む重力理論の今後の実験的検証への応用が大いに期待できる。また、強重力の性質を理解するため、「ガウス・ボネ定理」を用いた光の曲がりの研究も行った。素粒子模型などが示唆する「宇宙ひも」などは欠損角をもつ時空を予言する。こうした欠損角をもつ時空における「光の曲がり角」を厳密に定義することに成功した。そして、その定義式を用いて「光の曲がり角」を計算する手法を与え、実際、重力的単極子の場合に具体的な計算を遂行した(Ono and Asada, PRD, 2019)。
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