原子核殻模型計算における相互作用パラメータ由来の不定性を、ベイズ統計により解析するためには、パラメータを少しずつ変えて多数の殻模型計算を実行し、その統計をとる必要がある。これを効率よく計算するために、eigenvector continuation (EC法)という手法を殻模型計算に導入し、性能評価をおこなった。 EC法では、事前にあるパラメータでの殻模型計算における対角化計算結果であるサンプルベクトルを複数用意しておく。それらの線形結合で、計算対象のパラメータをもつ殻模型ハミルトニアンの固有ベクトルを近似しようというものである。さらに既存のサンプルベクトル間の1体・2体遷移密度行列要素をすべてあらかじめ求めておくことによって、固有ベクトルを新たに構築することなく、エネルギーをはじめとしたあらゆる1体、2体演算子の期待値の近似計算を可能とした。EC法によって得られたエネルギーは、実際に対角化計算した結果とよく一致することを示した。しかしながら、さらに高い精度を要求される励起エネルギーなど他の物理量に関しては、一部課題が残る結果が得られた。 並行して殻模型計算コード”KSHELL”のpython version 3 への対応や、生成座標法の殻模型計算への導入、コード開発と性能評価をおこなった。ベンチマーク計算をおこない、直接対角化計算による殻模型計算が不可能な中重核領域では、射影HFB波動関数基底による生成座標法が近似として有効であることを示した。
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