研究課題/領域番号 |
17K05434
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川崎 雅裕 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50202031)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 原始ブラックホール / インフレーション模型 / 暗黒物質 / 超重力理論 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、昨年度に引き続き原始ブラックホールを生成するインフレーション模型の構築を行った。まず、インフレーションが2段階で起こるダブルインフレーション模型に基づいて、生成される原始ブラックホールの質量関数を求め、最新の重力レンズ効果の観測と比較することによって原始ブラックホールが観測と矛盾することなく暗黒物質になることを明らかにした。また、原始ブラックホール生成に必要な大きな密度揺らぎの2次の効果に起因する重力波の生成量を定量的に見積もり、パルサータイミングの観測と矛盾なくLIGOで発見された重力波イベントが説明できることを示した。さらに、このダブルインフレーション模型は2つの質量ピークを持つ質量関数を予言し、暗黒物質とLIGOで発見された重力波イベントの両方を同時に説明できることを明らかにした。 また、原始ブラックホール生成の模型として、アクシオン・カーバトン模型とアフレック・ダイン機構に基づく模型の2つを提案し、これらの模型がLIGOで発見された重力波イベントを説明する原始ブラックホールを生成できることと、これらの模型における暗黒物質について調べ、アクシオン・カーバトン模型についてはアクシオンが暗黒物質の良い候補となること、アフレック・ダイン機構に基づく模型においては原始ブラックホールと同じ起源で作られるノントポロジカル・ソリトンであるQボールが暗黒物質になることを明らかにした。 宇宙初期の元素合成期に崩壊する粒子が元素合成に与える効果を調べるために従来の計算コードを改善し、最新の観測データを用いて崩壊に粒子に対する一般的な制限を求めた。また、これを超重力理論で予言されるグラビティーノに応用し、インフレーション後の宇宙の再加熱温度に対する制限をアップデートした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたように、原始ブラックホールを生成するインフレーション模型を構築でき、原始ブラックホールが暗黒物質を説明できるかどうかを明らかにすることができ、さらに新たな原始ブラックホール生成の模型を構築することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
LIGOがブラックホール連星合体による重力波イベントの発見したことによって、原始ブラックホールの研究の重要性・注目度が非常に高まっているので今後も引き続き、原始ブラックホールの生成や観測的検証に向けた研究に重点を置いて研究を進めつつ、当初の研究計画に沿って暗黒物質の研究も進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コンピューター関連の機器の購入の予定が次年度に延びたため。
|