研究課題/領域番号 |
17K05435
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
安井 繁宏 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 特任助教(有期)(研究)(非常勤) (00535346)
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研究分担者 |
新田 宗土 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (60433736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エキゾチックハドロン / ハドロン相互作用 / チャームハドロン |
研究実績の概要 |
エキゾチックハドロンの一つとして知られているハイブリッドメソンの質量スペクトラムと崩壊幅を研究した。Y(4260)に対応する可能性のある状態としてチャームクォーク, 反チャームクォーク, グルーオンの3体系として基底状態および励起状態の質量を求めた。ハミルトニアンの計算方法としてhyperspherical法を用いた。また3P0モデルを適用してDメソンの対に崩壊する崩壊確率を評価した。 別のハイブリッドメソンとして、チャーム, 反ボトム, グルーオンの3体系を議論した。hyperspherical法を用いてハミルトニアンを計算して質量スペクトラムを求めて、3P0モデルを用いてDメソン-反Bメソンへ崩壊する崩壊確率を評価した。 核物質に不純物としてチャームバリオン(Lambda_cバリオン)が存在するときの束縛エネルギーおよびバリオン物質密度の変化を議論した。低エネルギーにおける有効理論を与えて有効理論のパラメーター(結合定数)は格子QCD計算で得られた散乱長を再現するように制限を課した。 中性子星内部の高密度物質におけるハドロン間相互作用の応用として中性子物質におけるP波超流動を議論した。マグネターにおける強い磁場の効果を考慮するために、ギンツブルグ-ランダウ方程式において磁場の高次項を考慮して、中性子P波超流動の相図と熱力学的性質(比熱, 帯磁率)を求めた。 中性子星内部におけるハドロン物質(ハイペロン物質)とクォーク物質の繋がりについて量子渦の観点から議論した。ハドロン物質ではフレーバーシングレットの超流動が存在して、クォーク物質ではCFLカラー超伝導があるとして、両者の間に量子渦が存在するときに境界面においてブージャムが現れることを示した。超流動体のcirculationのみならずクォーク波動関数のAharanov-Bohm位相が重要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エキゾチックハドロンの研究としてハイブリッドメソンについて質量スペクトラムのみならず崩壊定数も含めて一つの枠組みで取り扱うことによって系統的な情報を得ることがで至らなかった。またグルーオンのコヒーレンスについても時間の都合上研究を深めることができなかった。またハドロン間の相互作用の応用問題として、核物質におけるチャームバリオン(Lambda_cバリオン)の束縛状態の問題を考えたが、限られた研究時間内で結果を得るためには相互作用の形については最も簡単なものを仮定せざるを得なかった。より詳細な情報は格子QCDの計算結果によって変わる可能性がある。また中性子星内部における中性子間のP波相互作用について計算時間の短縮のため有限到達距離を無視した近似をおこなった。研究時間を確保した上で有限到達距離を含めたより現実的な議論を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画における重要な研究対象の一つであるダブルチャームをもつエキゾチックメソンは最も簡単なエキゾチックハドロンの一つであり、現象論のみならず格子QCDの観点も取り込んだ定量的かつ包括的な研究が必要である。KEK-Belle-IIの実験研究が進んでいることも考慮しつつ、ダブルチャームの質量スペクトラム, 崩壊定数, 生成断面積について包括的な観点から理論研究を進めていきたいと考えている。またLHCbにおけるダブルボトム生成の可能性を見据えつつ、ダブルボトムメソンについても同様に理論研究を行う予定である。また核物質中における重いハドロンの性質の一つとして、チャームバリオン(Sigma_cバリオン)における近藤効果を議論する予定である。すでに予備的な研究として摂動的な取り扱う場合については結果が得られており論文発表の準備が進行中である。これをさらに非摂動的な領域に拡張して、基底状態におけるSigma_cバリオンの熱力学的性質を解明したい。さらに中性子星内部の中性子P波超流動について、これまでに得られたギンツブルグ-ランダウ方程式の結果をもとにして現実的な課題の解決を行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はまだ十分な研究成果が得られていなかったので海外での国際会議の参加を控えたため未使用額が発生した。次年度では海外の国際会議に参加して積極的に研究成果を発信する予定である。
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