研究課題/領域番号 |
17K05437
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
高橋 弘毅 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (40419693)
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研究分担者 |
秋月 拓磨 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40632922)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙物理学 / 重力波天文学 / 重力波データ解析 / 時間-周波数解析 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、基礎検証フェーズとして、実観測データへの適用検討に向けて手法の改良・拡張を中心に進めた。 まず、特に適応型の時間-周波数解析手法である Hilbert-Huang 変換 (HHT) 解析アルゴリズムの高速化に取り組み、計算精度を保ち十分な計算速度が得られることを確認した。 また、開発したアルゴリズム・プログラムを用いて、超新星爆発のような短い時間での現象による重力波の解析や連星ブラックホール重力波の凖固有振動の開始時刻の推定をする解析手法の開発も進め、シミュレーションデータを用いて解析手法の検証をおこなった。連星ブラックホール重力波の凖固有振動の解析手法については論文としてまとめ出版をし、超新星爆発からの重力波については引き続き手法の有効性の検証を進めている。 次に、HHT解析と機械学習を組み合わせた重力波信号とノイズ識別手法についての検討を進めた。重力波の解析では、重力波信号と検出器ノイズを明確に識別することが最重要である。 HHT解析において、重力波信号が存在している時間部分とノイズのみの部分では瞬時振幅と瞬時周波数の特徴が異なることが分かっていたが、シミュレーションデータを用いて、それらの特徴をより詳細に調べた。得られた特徴を用いて、重力波のデータ解析への応用を念頭に置いた、HHTと機械学習の一種である異常検知を組み合わせた手法の構築を進め、その基礎的な部分について論文としてまとめた。論文は現在印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
適応型の時間-周波数解析手法である Hilbert-Huang 変換(HHT)を実観測データへ適用する準備としての手法の改良・拡張やHHTと機械学習を組み合わせる検討については、当初の予定どおり進んでおり、国内外の学会や国際会議でもその進展状況を報告している。さらに、論文出版も着実に進めている。 解析プログラムの開発と計算の実行には現有のCPU, GPU計算機を用いた。観測データ(数十TBに対応)を保管するストレージを購入する予定であったが、平成29年度はシミュレーションデータを扱い、現有のストレージに余裕があったため次年度以降に購入を検討することとした。 また、国外の研究協力者との研究打ち合わせについては、電子メールやテレビ会議を利用した打ち合わせの回数を増やし、今のところ研究遂行は順調である。 以上を総合的に考慮し、研究目的を達成するための本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
基礎フェーズで得られた成果をもとに、応用検証フェーズとして位置づけている実観測データへの適用検討を進めていく。 特に機械学習の導入について検討を加速させる。具体的には、HHT解析結果の瞬時振幅と瞬時周波数の特徴が重力波信号部分とノイズ部分では振る舞いが異なるという特徴を数値化する「特徴量」の選定を進め、機械学習のアルゴリズムの中で信号と雑音を識別するために適したアルゴリズムの選定・評価をし実装する。さらに、観測データには非ガウス性や非定常など特有の雑音特性があり、それが解析結果に重大な影響を与えることが知られている。観測データ固有の雑音特性の学習も進めていくため、LIGO が公開している過去の観測ノイズデータに重力波信号を注入してHHT解析を行い、そのHHT解析結果と機械学習を組み合わせた重力波信号とノイズの識別をおこなうための準備を進めていく。 マッチドフィルタ解析との連携についても進めていく。HHT解析により重力波信号が含まれる可能性が高いことが明らかになったデータに対して、パラメータ領域を限定してマッチドフィルタ解析を実行し、さらに抽出された重力波信号に再度HHT解析を行い、重力波の性質を詳しく調べるという総合的な検出・解析手法を確立する。 複数の重力波望遠鏡のデータを連係させて検出効率と解析精度の向上を行うためのHHT解析手法の開発も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
観測データ(数十TBに対応)を保管するストレージを購入する予定であったが、平成29年度はシミュレーションデータを扱い、現有のストレージに余裕があったため次年度以降に購入を検討することとした。
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