本研究の目的は、冷却原子多体系やハドロン物質を媒質とした不純物粒子の準粒子的性質を解明し、媒質中における不純物粒子少数系の性質を明らかにすることである。準粒子としての性質、および、不純物粒子間の有効相互作用は、媒質自体の性質と媒質を構成する粒子と不純物間の相互作用によって決まる。当該年度は、以下の研究成果が得られた:
1)アルファ粒子は中性子2つと陽子2つで構成される複合粒子であり、真空中では強く束縛されている。一方、質量数の大きな中性子過剰原子核や超新星物質など、有限密度の核物質中においても中性子2つと陽子2つは強く相関し有効的にアルファ粒子とみなされる。このような背景から本研究では中性子物質に埋め込んだアルファ粒子の準粒子的性質が、真空と比べてどのように変化するかを調べた。理想的状況としてアルファ粒子1つをゼロ温度の中性子物質に導入し、アルファ粒子‐中性子間S波相互作用が有効な低密度領域において、アルファ粒子の分散式、有効質量、崩壊幅、準粒子留数を、梯子近似ダイアグラムを採用して評価した。有効質量は約10%程度上昇し、崩壊幅も小さく、準粒子としての描像がよく成り立つことが分かった。更にこれらの結果をもとに、媒質粒子媒体の有効相互作用も考慮して、媒質中におけるアルファ粒子3体の束縛状態を評価した。暫定的ながら、媒質中では有効質量の増加と有効相互作用により、真空中よりも強い束縛状態になることを示した。
2)媒質中における不純物粒子間相関を評価するには、不純物粒子間の有効相互作用が必要となる。1)のアルファ間有効相互作用の導出と同様に媒質粒子のループ展開を採用し、特に冷却原子系におけるフェルミ粒子およびボーズ粒子媒質中の有効相互作用を導出し、それを用いた不純物2体波動関数のシミュレーションをおこなった。更に実験における再現性も示した。
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