研究課題/領域番号 |
17K05450
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
東山 幸司 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (60433679)
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研究分担者 |
吉永 尚孝 埼玉大学, 理学部, 教授 (00192427)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原子核構造 / 二重ベータ崩壊 / 殻模型 / 核子対殻模型 / 生成座標法 |
研究実績の概要 |
本研究の成果は,ゲルマニウム76原子核,セレン82原子核,テルル130原子核およびキセノン136原子核に対して,ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の核行列要素を評価したことである。本研究では,殻模型計算と幾つかのタイプの核子対殻模型計算により得られる原子核波動関数を用いて核行列要素の数値解析を実行したところ,模型空間が小さくなるにつれて核行列要素が大きくなることを明らかにした。これまでの先行研究では原子核殻模型,乱雑位相近似,相互作用するボソン模型等により核行列計算が計算されてきたが,本研究の計算結果はこれらの先行研究の結果に比べて小さい核行列要素を予言している。 また本研究では,質量数100領域の偶偶核・奇核・奇奇核について殻模型により精密計算を行い,原子核の励起メカニズムを明らかにした。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まであまり行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用いて数値解析を実行し,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。さらに,この相互作用を用いて生成座標法による偶偶核の数値解析を実行し,得られた波動関数を解析することにより,原子核の軸対称変形の効果を取り入れることでイラストバンドを再現できること,三軸非対称変形の効果を取り入れなければガンマバンドを再現できないことを確認した。 その他の成果として,質量数130領域の原子核について,パリティと時間反転対称性を破る相互作用により生じる電気双極子モーメントを計算し,中性原子の電気双極子モーメントの評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では平成29年度において,質量数100領域の原子核構造の数値解析,およびニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の核行列要素の計算を行う計画であった。現段階では,これまで核子対殻模型でしか計算できなかった質量数100領域の原子核に対して,殻模型計算の数値解析を実行することを可能にして,原子核の励起メカニズムを明らかにしている。ただ,二重ベータ崩壊の計算は行っておらず,その点では予定よりも遅れている。一方で,次年度以降に予定されていた,生成座標法による質量数80領域の原子核構造の数値解析は進んでおり,研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では本年度(平成30年度)において,質量数100領域におけるニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の核行列要素の計算を目指す。現在は質量数100領域の原子核の有効相互作用を決定する作業を進めている段階であり,これが完了した後に二重ベータ崩壊の核行列要素を計算する。これと並行して,質量数150領域の原子核構造の解明を目指す。この領域の原子核を計算するための計算コードの改良は行っており,質量数150領域の有効相互作用を決定する段階である。偶偶核・奇核・奇奇核のエネルギー準位・電磁遷移の実験値を同時に再現するように相互作用を決定し,核子対殻模型の波動関数を詳細に解析することで原子核構造を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,数値計算を行うためワークステーションが不可欠である。平成29年度において研究を遂行する上で十分な性能を持つワークステーションを購入する予定であったが,機種の選定に時間を要したため,購入する事ができなかった。そこで,次年度に予算を繰り越し,十分な性能のワークステーションを購入する計画である。
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