研究課題/領域番号 |
17K05452
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
富沢 真也 豊田工業大学, 工学部, 教授 (20624042)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超対称性 / レンズ空間 / 5次元 / 高次元ブラックホール / 安定性 / 厳密解 / 測地線 |
研究実績の概要 |
4次元シュバルツシルドブラックホールの周りを運動する有質量粒子の束縛軌道は安定であるが、無質量粒子の束縛軌道は不安定である。また、時空次元が5以上の高次元シュバルツシルドブラックホールの場合、有質量粒子と無質量粒子ともに安定束縛軌道が存在しないことが知られている。本研究では、L(2,1)とL(3,1)のトポロジーをもつ5次元超対称ブラックレンズの周りを運動する粒子の挙動を解析した。そのようなブラックレンズでは、(球面のブラックホールとは対照的に)有質量粒子と無質量粒子のどちらも、安定束縛軌道が存在することを明らかにした。特に、回転軸上では、レンズ空間のトポロジーに関係した特定の整数比を持つ角運動量の粒子だけが、運動することを許されることを示した。この結果は、ホライズン近くの粒子の2つの角運動量の比を測定すれば、ブラックホールのトポロジーを確認できることを示唆する。また、エネルギーE=0の無質量粒子のどちらの粒子も、evanescent ergosurface上を運動し続けることを数学的に証明した。このことは、解の不安定性を意味すると期待できる。前研究では、L(2,1)のトポロジーのブラックレンズについて、主に回転軸上にある粒子だけに着目した。本研究では、軸から離れた領域を運動する粒子の振る舞いを調べ、安定束縛軌道が存在することを確認した。また、L(3,1) のレンズ空間トポロジーをもつ超対称ブラックレンズの周りの粒子の挙動を調べ、トポロジーによる粒子の運動の違いを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Reall達の先行研究によると、evanescent ergosurface上を運動するエネルギーE=0の無質量の粒子の存在は、時空の不安定性を示唆する。前研究は、evanescent ergosurface上を運動する粒子の存在を数値的に示しただけにとどまったが、本研究では数学的に証明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
球面トポロジーを持つ5次元のブラックホールの場合、有質量粒子と無質量粒子ともに安定束縛軌道が存在しないことが知られている。本研究では、超対称ブラックレンズの周囲を運動する粒子の挙動を調べ、有質量粒子と無質量粒子の安定束縛軌道が存在することを確認したが、今後はその起源を明らかにする。具体的には、以下の点を解析する。(1)ブラックレンズ時空には、泡(バブル)のような非自明な位相構造が存在する。物理的には、この泡が、周囲を運動する粒子に引力を及ぼし有限領域に留めているためだと考えられる。そのため、(ホライズンが存在しない)泡だけがあるような時空において粒子の運動を調べ安定束縛起動が存在するかどうか調べる。(2)レンズ空間のトポロジーを持つブラックホールではなく、球面やリングトポロジーのブラックホールで泡が存在する時空において、粒子の軌道を調べ安定束縛起動が存在するかどうか調べる。もし、(1)と(2)で、安定束縛起動が存在すれば、ブラックホールのトポロジーはその安定束縛起動の存在には本質的ではないことがわかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、県外に出張ができず、研究集会に参加できなかったことと、共同研究者が所属する研究機関に研究打ち合わせのための出張ができず、出張費を使用できなかったため。 次年度もコロナの影響で、研究会集会のオンライン開催や県外への出張が制限されることが予想されるため、オンライン会議用の端末やアプリを購入する。
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